フィルム風映像の「研究」

ソニーのミレーレス一眼カメラのα7 IIを手に入れて以来、本来の購入目的である、動画のLogについて「研究」しています。素人の私がすることですから、カギカッコつきの研究としておきます。

撮って出しでも綺麗な動画を撮影することはできます。しかし、それを再生させると、ビデオの映像を見ているようです。記録の動画であれば、その動画で問題はありません。

しかし、Logで動画を撮ると、同じカメラで撮影しているにも拘らず、ビデオの動画には見えません。

これが不思議で、魅力的なところです。

Logでの撮影を否定的に考える人は、普通に動画を撮影し、撮影した時点で綺麗な映像に撮れているなら、わざわざ面倒なLogで撮影するまでもない、というようなことをいいます。

同じ被写体を、普通の動画で撮影した映像と、Logで撮影した映像を比べれば、違いは一目瞭然です。

Logが出始めた頃、一眼カメラでシネマティックな映像が撮れると話題になりました。

レンズが交換できるカメラで撮影すれば、民生用ビデオカメラでは得られないような、被写体以外のフォーカスをぼかして撮影することもでき、それがシネマティックと受け止められた面があります。

しかし、LogやRAWで動画を撮影すれば、それだけで、撮った映像にシネマティックな映像を得られます。

Logは、撮ったままでは、コントラストが弱く「眠い映像」です。それを、たとえば動画編集ソフトのDaVinci Resolve Studioに取り込み、色編集をすることで、コントラストと色彩を持つ映像に変わります。

その過程は、映画用ネガフィルムをポジフィルム(リバーサルフィルム)に変換するようなものでしょう。専門家にいわせれば全然違うといわれそうですが、便宜上、そのように捉えさせてもらいます。

あることを考えるときは、参考になるものがあると、頭だけで考えるより、理解が進みます。

前回の本コーナーでは、話の展開の偶然で、米国のテレビドラマ『刑事コロンボ』からのあるエピソードを切り取った動画を埋め込みました。

今回もその動画を埋め込み、フィルムで撮影された映像がどのように見えるか、参考にします。

Keeping up with Robert Conrad | Columbo

本動画は、シリーズ26作目(パイロット版2作品を含む)の『自縛の紐』(米国の初回放送:1974年9月15日|日本の初回放送:1975年12月27日)の数シーンです。

海水パンツ姿で写っているのが犯人のジャナスで、ロバート・コンラッド19352020)が演じています。

動画を見れば、本シリーズがビデオカメラでは撮影されていないことがわかるでしょう。ビデオの映像とフィルムカメラで撮影された映像の違いは、見ただけでわかります。

なぜ、フィルムで撮影された映像がビデオの映像と違って見えるのかが、私がしている「研究」です。デジタルカメラで撮影しながら、フィルムカメラで撮影したように見える映像にすることができたら、シネマティックな味わいを持つ映像にすることができます。

ビデオとフィルムのどちらかが現物をリアルに写し取っているかといえば、それはビデオです。

参考になるかどうかわかりませんが、今朝、庭で私が撮影した動画で見比べてもらいます。いずれも、10倍ズームレンズをつけて、手持ちで撮影しています。

まずは、ビデオ映像に近いITU709のピクチャープロファイル(PP)で撮影した動画です。露出をプログラムモード(Pモード)で撮影したところ、露出オーバー気味だったため、DaVinci Resolve Studioで明度を調節しています。色味には手を入れていません。

ITU709で撮影した「柿のある風景」

フィルムで撮影された映像を見ると、ビデオで撮影された映像のような、キラキラした感じがありません。具体的にいうと、画面の中の一番明るい部分は白飛びしていません。また、暗部も、真っ黒に潰れているわけではありません。明部から暗部までの諧調がなだらかといえましょう。

次は、Logで撮影し、DaVinci Resolve Studioで色編集した動画です。まだ勉強中ですので、生温かい目でご覧になってください。

Logで撮影した「柿のある風景」

明度とコントラストの調整をしていますが、コントラストは撮れた映像より若干弱めてあります。色味は、本ページで書くように、全体にマゼンタの色調をのせ、アンバーもほんの少し加えてみました。

アンバーといえば、油絵具ではバーントアンバーやローアンバーがよく使われます。ローアンバーが生のアンバーで、それを焼くことでバーントアンバーになるということです。

撮影時の設定は次のとおりです。

レンズの絞りを一番開けて撮りたかったので【ND64】のNDフィルターをつけたら(私が使う10倍ズームレンズ用のNDフィルターはこれしかもっていなかったので)、ISO感度がISO8000を選ばざるを得なくなり、その結果でしょう、暗部にノイズが生じています。

本日の豆知識
NDのあとの数字で、どのくらい減光するか表されています。ND64であれば、レンズから入る光量が1/64になる、といった具合です。

そこで、今後のことを考え、【ND16】程度のフィルターの購入を考え始めました。

本日の豆報告
ND16フィルターを購入しました。10倍ズームのフィルター口径は72ミリです。価格は口径の大きさに比例します。結構な価格です。可変式のNDフィルターも考えましたが、今回は、固定のND16にしてみました。

本ページで紹介している『刑事コロンボ』の動画の話に戻します。

参考にさせてもらっている『刑事コロンボ』の映像に見られる傾向について書きましたが、作風によって、制作者は、映像効果を変えるでしょう。たとえば、スリリングな作品であれば、コントラストを強めにするなどです。

色調に関しては、前回更新した中でも書きました。私が本動画を見る限り、全体にマゼンタの色調がのっているように感じます。

本動画の冒頭は、主演のふたりの背景に、空と海が写っています。空も海も青色ですが、青色だけでも様々な色相があります。

絵具でいえば、セルリアンブルーという色があります。この青は、赤味を感じさせません。同じ青でも、ウルトラマリンは、赤味を感じさせる青です。同じ青でも、寒色から暖色まで、あります。

青色に限った話ではありません。どの色にも、寒色と暖色があります。

フィルムやデジタルの映像の三原色は「光の三原色」といい、赤・青・緑の三色です。

絵具の三原色は「色の三原色」といい、赤・青・黄の三色です。

理論上は、光の三原色を合わせると白い光になり、色の三原色は黒色になるとされています。

絵具で色を塗る時、三原色を混ぜ合わす加減で、どんな色でも作れるとされています。不透明な油絵具の場合は、明度の調節を白とアンバーでします。

白の絵具を加えれば加えるほど明度は高くなります。しかし、それに比例して、彩度が落ちます。青に白を混ぜれば、明るい青になりますが、青が本来持つ彩度が、白が加わるにつれて低下するというわけです。

動画の話に戻れば、青に黄や赤を少々加えることで、ニュアンスのある青になります。

今回参考にしている『刑事コロンボ』の動画を観察すると、全体にマゼンタがのっているように私には感じられます。空や海の青にもそれがのることで、温かみのある青に見えます。

場面が犯人であるジャナスの邸宅に替わると、植え込みの木々が画面に映ります。木々の葉は緑色のはずですが、フィルム映像に映る葉は、ナチュラルな緑色には見えないでしょう。

緑色にも寒色と暖色があります。本動画の場合は、温かみのある緑で、そのために、マゼンタがうっすらのっていることに気がつくというわけです。

冒頭シーンの砂浜の砂にもマゼンタがのっていたことに気がつかれましたか?

『刑事コロンボ』シリーズに限らず、米国のテレビドラマの撮影に使われるフィルムは、劇場用と同じ35ミリフィルムだと聞きます。

日本でも、ビデオで制作されるようになるまではフィルムで撮影していました。しかし、日本のテレビドラマは、米国と違い、多くは16ミリフィルムで撮影されたと聞きます。

米国で使われるフィルムは、多くがコダックのフィルムであったでしょう。このフィルムが持つ色味が『刑事コロンボ』シリーズにも反映されたとすれば、コダックのフィルムは、本来的にマゼンタかぶりを計算して作られていた(?)といえましょうか。

米国の昔の映画やテレビドラマを見る時は、そのあたりのことを考えて見ると、コダックと米国の映像制作者が好む色の傾向がわかると思います。

私も、それらの映像を見てきたからか、ソニーのカメラに感じるマゼンタかぶりの傾向が自分の好みである、と本コーナーで書きました。

色味にも好みがありますから、ソニーの色が気に入らないという人がいても少しも構いません。しかし、そういう人にも、米国で好まれる色味の傾向があることは知っておいて欲しいところです。

フィルムの映像が持つコントラストと色味の傾向がわかれば、デジタルカメラで撮影した映像も、それに近づけることができます。

Logで撮影した映像は、逆に、ビデオカメラで撮影した映像に近づけるのが難しいです。Logの映像をカラーコレクション(カラコレ)するだけで、なんとなくフィルムの映像に近づくのですから、自分でやってみると楽しいです。

Logに好意的でない人は、撮って出しの映像が綺麗に撮影できているのであれば、Logで撮る意味がないなどといいます。しかし、ここまで書いたことで理解されたかと思いますが、両者は映像の質は違うものなのです。

デジタルカメラで撮影しただけの映像は、ビデオで撮影した映像と変わらず、フィルムの映像の味はありません。ですから、綺麗な撮って出しの映像は、ビデオの撮って出し映像のようだということです。

それだったら、はじめからビデオカメラで撮影すればいいでしょう。ミラーレスのカメラにこだわらなければ、電動ズームが使えるビデオカメラのほうが、撮影も楽ではありませんか? レンズを交換せずに、広角から望遠まで自由に撮影できます。

その代わり、スタジオで撮影されるニュースやバラエティ番組の映像と変わりないものに仕上がってしまいますけれど。

そういえば、スタジオで撮影されたテレビ番組の映像を見て、明度や色調をとやかくいう人はあまりいませんね。

Logは、撮影だけでなく編集にも手間がかかります。しかし、ビデオではない、フィルムで撮影したかのような映像が作れ、興味が尽きません。

素人なりに「研究」し、より良いLog映像が作れるようにしたい、と考えているところです。

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