α7 II用私なりの動画セッティング

先月末、それまで一年半ほど使ったキヤノンのミラーレス一眼カメラ(ミラーレス)のEOS RPから、RPに換えるまで使っていたソニーのミラーレス、α7 IIに再び換えたことは本コーナーで書きました。

換えた理由は、急にまた、動画のLog撮影に興味を持ったことです。この撮影には制約がつきまといますが、撮影したあとが楽しみです。

たとえば、私が使う動画編集ソフトのDaVinci Resolve Studioを使うことで、ネガフィルムで撮影した映像を「現像」するように(実際には、両者は似て非なるもの〔?〕だと思いますが)、自分が望む色合いにすることができる、とされているからです。

再びα7 IIを使い出し、わからないなりに自分でいろいろ試しました。その結果は、「やはり、Log撮影は難しい」です。

この結論は一年半前に出て、それもあって、手軽に良さそうな色合いで動画を撮影できるEOS RPに乗り換えたはずでした。

人間というのは、とかくないものねだりをし、後悔を繰り返します。

とはいっても、α7 IIにしたことで、得たことも少なくありません。まず、ソニーの色合いですが、このことは本コーナーですでに書いたように、私個人の好みとしては、ソニーのカメラが持つ色味(といっても、機種によって色合いは微妙に異なるかもしれませんが)は好みです。

ネットの動画共有サイトのYouTubeで、このところは精力的に動画を配信されているプロの映像制作会社の社長、桜風涼(はるかぜ・すずし)氏(1965~)などは、ソニーの色合いが好みに合わない話をよくされています。

桜風氏は、仕事の性格上、人物を撮影することが多いそうです。それで、実際に人物をソニーのカメラで撮影すると、肌色がどうも気に入らないそうです。

曰く、黄色味が強く出て、日本人の肌色が「沢庵(たくあん)」の色に見えるそうです。

ソニーの色味については、私は桜風氏とは異なった印象を持っています。それはちょうど桜風氏の感想とは反対で、ソニーの色味について書いたときにも書いていますが、黄色味ではなく、マゼンタが浮いたような色味に感じます。

桜風氏が最近手に入れたソニーのシネマカメラ、FX30は、画像エンジンも私のα7 IIとは違いますから、設定が異なっているのかもしれません。

ともあれ、私はソニーのカメラが持つ「マゼンタかぶり」が嫌いではありません。

プロの写真家で風景をよく撮影される写真家は、日中はホワイトバランス(WB)を「太陽光」にして撮影すると述べる人が多く見られます。私は日中もオートホワイトバランス(AWB)で撮影します。

この方が、私には自然な色合いに感じるからです。ま、色の好みは千差万別ではありますが。

桜風氏がおっしゃるように、黄色味が強いのであれば、たとえば木々の色の緑色が強まったり、黄緑色に片寄りそうなものですが、私が見る限り、緑が基調の木々の色にもマゼンタがかかり、緑の色がやや黒に近づいているように見えます。

緑とマゼンタは補色に近い関係にありますので、そういうことが起こります。絵具でこの2色を混色すれば、緑がかったり、赤紫がかった明度の低い色を作れます。

私は人物の撮影をしないので確認のしようがありませんが、桜風氏が昨日(4日)配信された動画を見ますと、そこに写る桜風氏の肌の色が、私には「マゼンタかぶり」しているように感じられます。

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色味の話でいえば、ニコンのカメラで撮ると日本人の肌の色が黄色っぽく写るといわれていました。今は変更されたかもしれません。

桜風氏がいう、桜風氏が使うソニーのカメラで人を撮ると、肌の色が沢庵色に見える、ということについて考えておきます。

これは、黄色人種である日本人に当てはまることでしょう。個人差はありますが、日本人の肌は、白人に比べて色素に黄色味を多く含みます。

白人と一言でいっても、驚くほど白い肌の人もいる一方、日本人と変わらないか、日本人より色素の濃い人もいるでしょう。

テレビで『刑事コロンボ』を見ていたら、出演している俳優が皆、日本人よりも色素の濃い肌をしているように感じました。ネガフィルムを現像する段階で、色味を変えている(?)のでしょうか。

Keeping up with Robert Conrad | Columbo

一例として、『刑事コロンボ』の動画を埋め込んでみましたが、どんな感想を持たれたでしょう。肌の色にマゼンタがかかっていることに気がつかれましたか?

これは、かけたくないのにかかったのではなく、はじめからかけることが前提で色作りをしています。この作品が作られた頃は、このような色作りが基本だったのだと思います。

このような色が好きで、それだから、私はソニーのマゼンタかぶりが嫌いではないのです。人肌だけでなく、木々にもマゼンタがかぶり、そのことで、明度を落とした表現になっています。

さらにいえば、空と海にもマゼンタがのっていることで、温かみのある青色に仕上がっています。もしもそれがなければ、寒々した色に見えてしまいます。

絵具で色をつけるときも、青い絵具はそのまま使わず、マゼンタと同系色のクリムソンレーキを加え、温かみを持たせたりします。それと同じ理屈です。

マゼンタに含まれる紫色は、黄色とは補色の関係にあります。黄色味がある肌の上に、マゼンタがかぶれば、黄色の彩度が落ちます。あとは程度の問題ですが、黄色味を帯びた肌の彩度が落ち、くすんだ、沢庵のような色に桜風氏には見える、ということになりましょうか。

デジタルのカメラを使っているのですから、カメラの設定を変え、自分が望むような色味にすればいい、ように個人的には考えますが。

ソニーのカメラでは、不思議な話があります。ソニーのビデオカメラは、色味が寒色系との書き込みをネットで見かけました。ビデオカメラとミラーレスでは、色味を変えているということでしょうか。

桜風氏がお気に入りの色味は、富士フイルムのカメラが持つ色味のようです。富士フイルムはフィルムメーカーとして長年の経験を持つため、色彩の設計は、国内の他者が追随できないであろうことは造像できます。

私は富士フイルムのデジタルカメラは使ったことがありませんので、桜風氏が話すことは、頭で理解するだけです。

そんな私ではありますが、富士フイルムの色の出し方をまるで知らないわけではありません。

民生用のビデオカメラがなかった時代、私は素人の個人として動画を撮影して楽しんだ経験を持ちます。そのために利用したのが8ミリ映画用カメラで、私は富士フイルムのシングル8を使いました。

8ミリフィルムの規格はもうひとつ、コダックが開発したスーパー8があり、富士フイルム以外の世界中のメーカーはスーパー8規格でカメラを開発して販売しました。

ちなみに、8ミリ映画の映写機は、シングル8とスーパー8のどちらも映写して愉しむことができます。私の映写機は、スーパーになる前の、フィルムを送るためのパーフォレーションがスーパーよりも大きい、ダブル8も映写できます。

そのように、富士フイルムの8ミリフィルムで撮影し、撮影が終わったフィルムは映写機にかけ、スクリーンに上映して楽しみました。

このような楽しみ方をしたため、8ミリフィルム時代の富士フイルムの色味は身をもって体験し、私の脳裏にも焼き付いているはずです。

商業映画の話に移ります。

映画がすべてフィルムで撮影された時代の映画は、邦画と洋画で色味が違って感じることはありませんか。映画についても素人である私ではありますが、私はその違いを何となく感じることがあります。

映画会社や映画監督によって使う映画フィルムは違うかもしれませんが、たとえば、山田洋次監督(1931~)の『男はつらいよ』シリーズは、どれも富士フイルムの映画フィルムで撮影されたのではないかと私は考えます。

映画『男はつらいよ』(第12作)予告編映像

その一方、往年のハリウッド映画は、米国のコダック製映画フィルムが主に使われたのかもしれません。

Ben-Hur (3/10) Movie CLIP – The Chariot Race (1959) HD

富士フイルムとコダックは、それぞれに色味の特徴を持っています。それが現れているのが、フィルムが入っている箱に現れている、という話が昔ありました。

8ミリ映画のフィルムでいえば、富士フイルムの箱の色は緑色が基調です。一方、コダックはオレンジ色が基調色です。そこから、富士フイルムは緑色が、コダックはオレンジ色が綺麗に発色する、といった話があります。

8ミリフィルム シングル8(富士フイルム)とスーパー8(コダック)の箱パッケージ
本日の豆知識
それぞれの箱には数字があります。フジクロームが25、コダクロームは40です。これはISO感度です。たったのISO25とISO40です。こんな低感度でどうやって撮影するの? と今の人は驚くでしょう。この当時は、これが当たり前で、不自由を感じずに使っていました。
といいますか、コダクロームはフィルターを適用することで室内でも撮影できましたが、フジクロームは外で撮るためのデイライトタイプです。毎秒18コマで撮るのですから、低感度のほうが都合が良いのです。光量を下げるためのNDフィルターも必要ないですし。
ちなみに、フジクロームには、電灯光用のタングステンタイプがあり、これはISO200でした。

商業映画でいえば、ハリウッド映画は色合いにこくがある暖色系とすれば、富士フイルムで撮られた邦画は、すべてがそうとはいいませんが、あっさりした色合いの寒色系であるように感じることがあります。

商業映画のカラー作品ということでいえば、白黒で作品を作って来た小津安二郎監督(19031963)が、カラーで作品を撮ることになり、ドイツのアグファ社の映画フィルムを好んで使ったことが知られています。

小津監督は色にこだわりを持ち、同社のフィルムが持つ地味な色合いを好んだ結果のようです。

小津安二郎監督作品リマスター修復比較映像
本日の豆感想
上に埋め込んだ動画は、小津監督の作品を修復する前とデジタル修復したあとで比較しています。明らかに色味が変わっているのがわかります。退色した色を復元したのであればいいですが、小津監督が計算した色味を変えてしまったとすれば、復元ではなく、「改竄(かいざん)」といえなくもありません。あくまでもこれは、素人の感想です。

色合いの話はこのくらいにしまして、私が最近、α7 IIに施した設定の話をします。ま、素人の個人がしたカメラへの設定ですから、こんなことを書いても、誰の参考にもならないでしょうけれど。

他社のカメラにも似たような機能が搭載されていると思いますが、プログラムモード(Pモード)やマニュアルモードに切り替えるダイヤルの中に、α7 IIは【1】と【2】と数字がついており、そこにはそれぞれ、自分がした設定ですぐに撮影ができるようにすることができます。

その【1】を私は動画専用モード(1)として使っています。はじめは、ソニーのLogモードであるS-Log2にし、露出をほぼオートのPモードで撮影するようにしました。

このモードで実際に撮影すると、手間暇がかかるLog撮影が簡単に行え、撮ったあとに色編集で楽しめます。しかし、Log撮影モードにすると、ISO感度の始まりがISO1600になってしまいます。

日中に外で撮影するとき、このISO感度で撮影するなら、レンズの絞りは絞り込み、シャッター速度もより速くしなければ露出オーバーになってしまいます。

そもそも、動画におけるシャッター速度は、フレームレートの半分(速度でいえば2倍速)程度が望ましいです。私は、映画の毎秒24コマと同じ24フレームを選んでいます。ですから、1/48秒が望ましいのですが、そのような中途半端なシャッター速度はなく、1/50秒にしたいところです。

しかし、PモードでLog撮影すると、ISO感度を精一杯下げてもISO1600ですから、何百分の一秒や何千分の一秒にならざるを得ません。

レンズから入る光量を落とすNDフィルターを使えばいいのですが、スチルの撮影の合間に動画をLogで撮るからといって、そのたびにNDフィルターをつけ外しするのは非常に面倒です。

そんなこんなで、モードダイヤルの【1】に設定した動画モードを変更し、ITU709(Rec. 709)で撮影するピクチャープロファイル(PP)にしてみました。

まだ、実際の撮影はしていませんが、これであれば、ビデオを撮影するような感覚で撮影できます。

ちなみに、この動画の撮影では、シャッター速度を1/50秒に固定し、ほかのレンズ絞りとISO感度はオートにします。ITU709での撮影では、ISOがISO400からになります。LogのISO1600よりは2段低感度から使えます。NDフィルターは光の強さで必要になることもあるでしょう。

この動画は、いわゆる撮って出しになりますので、あとで色編集する愉しみは味わえません。しかし、静止画を撮影する合間に愛猫などを動画で撮るだけですから、色合いにこだわるまでもありません。

本日の豆実感
自分で試してみたら、ITU709でも、Logにはもちろん及びませんが、明度の調整が比較的簡単にできます。多少であれば、彩度や色相の調整もできるでしょう。

モードダイヤルの【2】にはLogをマニュアル露出で撮影できる設定をしてあります。じっくりLog撮影する機会が訪れたら、モードダイヤル【2】を選んで撮影しますが、それだけ凝って撮影する機会は、そうあるとは思えません。

撮影後の色編集を味わいためだけに、Logをテスト撮影するときに【2】のモードを選ぶことでしょう。

動画の音をより綺麗に録りたいため、今年の途中に買い、あまり使っていなかった外付けマイクをα7 IIにつけてみました。

キヤノンのEOS RPのときは、ファインダーとマイクの取り付け部分が近かったため、ファインダーが覗きづらかったのですが、α7 IIは間隔があり、覗くのが楽です。

α7 IIを使うようになったことで、使わないままだったマイクの出番が増えそうです。

レンズは、一年半前までα7 IIを使っていたときに手に入れた10倍の便利ズームレンズを使うことにします。このレンズは、画質を重視する人からはそれほど高い評価は受けていないようですが、24ミリの広角から240ミリの望遠まで一本のレンズで賄えるのは何といっても便利です。

モードダイヤルの【1】で手軽に動画を撮影するときは、10倍ズームのビデオカメラで撮影する感覚で、愛猫の姿を捉えることができるでしょう。

楽しむためにカメラを使いながら、あれこれ試し、悩み苦しむ時間も結構あります。ま、それも含めて、カメラを愉しんでいるといえそうですが。

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