私が昔から映像に強い興味を持つことは、本コーナーで事あるごとに書いています。
昔は、当時、普通の個人が唯一扱えた8ミリ映画を楽しみました。8ミリ映画のあとは、ビデオに記録メディアが変り、現在に続いています。
そんな関係から、1999年5月にPCを使い始めてすぐに思いついたのが、動画をネットで配信することでした。当時のことですから、今とは比較にならないほど通信回線は貧弱なものでした。また、YouTubeのような動画配信に特化したサービスもありませんでした。
それでも、本サイトの更新に利用させてもらっていますサーバに、極限まで圧縮した動画ファイルを上げ、配信するようなことをしたものです。
時代は変わり、YouTubeがメジャーなサービスとなり、YouTuberなども登場し、ごく一部に限られるでしょうが、驚くほどの収入を得る人もいます。
昔から動画制作をする私ではありますが、動画を配信することで利益を得たことは一度もありません。YouTubeのチャンネル登録者が少なく、収益化の条件が満たされていないからですが。
私は別にYouTubeだけが動画の配信プラットフォームだとは考えていません。現に、ここ3カ月ほどは、クロッキーを描く様子を動画にして毎日上げていますが、この動画は、自分のサイトのためのサーバを利用しています。
私自身の動画の話が長くなってしまいました。このあたりで、本日取り上げる話題に移ります。
数日前、YouTubeで次の動画を見ました。
本動画を配信するのは、omokage氏です。たしか、兵庫県の尼崎在住だったと記憶します。
omokage氏の動画に出会ったのは、動画編集ソフトのDaVinci Resolve Stuidoを使い始めた頃、使い方を調べる過程で、omokage氏が使い方を解説する動画を上げていることに気がついたことによってです。
以来、気になった動画や、参考になりそうな動画を見つけると、見るようにしています。
今回の動画では、omokage氏のように、顔出しで動画を作る人に共通する課題であったりする(?)であろう、収録時のマイクについて話しています。
といいつつ、マイクの話ばかりでなく、「自立一脚」の話の方が長いような気がしないでもありません。おそらくは、一脚の話をしながら、その声が、マイクを替えることで、聴こえ方がどのように違うか、視聴者に聴いてもらう意図があるのだろうと思います。
私は、Vloggerのように顔出しの動画は作りませんので、マイクは差し迫った問題ではありません。ただ、動画を見る側に立って、素人が作る動画であっても、音の重要性は以前から感じています。
私に限っていえば、オーディオインターフェースを介してPCスピーカーから音を出すようにしたことで、元の音が小さければ、インターフェースのボリュームを上げることで、聴きやすい音量に簡単にできます。
ですので、たとえばYouTubeの元動画の音が小さく作られていても問題ありません。しかし、オーディオインターフェースを使ってネット動画の音を聴く人は多くない(?)でしょう。
そういう人には、やはり、聴きやすい音量で動画を作る必要があろうと思います。聴きづらい音では、よくできた動画でも、途中で見ることを止められてしまいがちですから。
omokage氏が今回問題にしているのは、マイクがエアコンの音を拾ってしまうことです。その対策として、通常使っているコンデンサーマイクよりも入力感度を下げて作られてたダイナミックマイクを使ったらどうか、ということです。
私は、YouTubeで音の専門家の桜風涼(はるかぜ・すずし)氏(1965~)に出会ったことで、音への関心が強まりました。
桜風氏の動画を数多く見たり、桜風氏の著書を読むことで、以前に比べれば、マイクや録音に関する知識は、自分なりに増えたと思っています。
マイクは、感度の違いで大別できます。コンデンサーマイクは感度が高く、ダイナミックマイクは感度が低い構造を持ちます。
桜風氏によって教えられたのは、値段が大きく違うマイクであっても、正しい使い方をすれば、同じように、良い音を拾うことができることです。
録音する環境はなるべく静かなところを選び、口とマイクの距離を、大体の場合は30センチ以内にすることが基本です。これを守れば、たいがいは良い音を拾うことができるそうです。
あとは、用途によってコンデンサーマイクとダイナミックを使い分けをすればいいことになります。
ダイナミックマイクがコンデンサーマイクに比べて感度が低いことを逆に利用するのが、歌手がステージで伴奏の楽器をバックにして歌うことや、カラオケで声を張り上げて歌うことです。
ダイナミックマイクは、入力感度を下げて作られているため、声を大きく拾わせるため、口に近づけなければなりません。桜風氏の説明では、口をマイクから5センチぐらいまで近づけると良いそうです。
歌手がそのようにマイクを使えば、感度の低いマイクの良さが活かされ、歌手の声だけを拾ってくれ、バックの楽器の音が小さくなり、聴きやすい歌声になります。
YouTuberやVloggerが顔出しで自分の声を録るときは、コンデンサーマイクを使うのが良さそうです。ダイナミックマイクを使ってもいいでしょうが、その場合は、マイクを口から5センチ程度まで近づければいいことになります。
日本のVloggerにそのような傾向があるように感じますが、マイクが画面に写ることを嫌う人がいます。そのような人は、ダイナミックマイクでより良い音を拾うのは難しいといえましょう。
「マイクは写っても全然かまわない」というのであれば、ダイナミックマイクを口に近づけてしゃべれば、主に声だけを拾ってくれ、たとえば、エアコンの音がしても、その音をマイクが拾うことを防いでくれます。
ステージで、演奏をバックに歌う歌手が使うマイクのように。
私は、桜風氏の話を聞いたり、桜風氏の著書を読んだことで、個人の配信者が最も手軽により良い音を拾いたい場合は、ラベリアマイク(ピンマイク)が最も良いと考えるようになりました。
ピンマイクもコンデンサーマイクに含まれます。これを胸元につけて音を拾うようにすれば、体を動かしたり、体の向きが変っても、一定の音量で拾ってくれます。
桜風氏はスタジオ収録の音声も担当されるそうですが、出演者にピンマイクを付けてもらえば、良い音を簡単に拾うことができると話し、書かれています。
医師で、個人医院を経営されている長尾和宏氏(1958~)は、ニコニコ動画で日に何本も動画を配信されていますが、話す声が明瞭に録られています。
ついでといってはなんですが、長尾氏の医院があるのは、omokage氏と同じ尼崎です。
動画を少し見ていればわかると思いますが、長尾氏は、ネクタイにピンマイクを付けています。たまに、ネクタイの下の方につけたマイクが写ることでわかります。
以上今回は、omokage氏がマイクについて話す動画を見たことで、自分なりの考えも含め、ネット動画を作る上で大切なポイントであるマイク選びや、マイクの使い方について書いてみました。
付けたしになりますが、どのようなマイクであっても、共通する弱点があります。それは、風が強く吹くようなところでは、風がマイクにあたると、ボコボコという音になってしまうことです。
同じ理屈で、話す人の息がマイクにあたっても、風切り音と同じような音を起こしてしまいます。
音を録るときは、そのあたりの注意が欠かせないことを付け加えておきます。
おまけのおまけで、音声ファイルを下に埋め込んでおきます。
32bit floatで録音できるフィールドレコーダーのZOOM F2に付属のピンマイクを付けて録音した私の声です。
今回は、写真家の木村伊兵衛(1901~1974)が書いた随筆の一部を朗読もどきしています。
この随筆が載っているのは『僕とライカ』という木村の随筆集です。その中から、木村が書いて、1933年に『写真新報』8月号に載った長い随筆の一部分です。
1930年にライカ社のカメラに運命的出会いをした木村が、ライカに初めて言及した随筆として知られるものです。そこには、カメラやライカへの思いや、木村が考える人物写真撮影の心構えのようなことが綴られており、興味深いです。
ネットの動画の音声を、ヘッドホンで確認する人は少数派でしょうか。ですから、多くの人は気がつかないでしょうが、オーディオインターフェースを介してPCに接続した感度の良いコンデンサーマイクで録音すると、PCの駆動音が小さく入ってしまいます。
私が使っているiZotopeのRX 9 Standardを使えば、その音を消すことができます。もっとも、ライヴ配信をする人は、あとで余計な音を消すことはできませんけれど。
ともあれ、ZOOM F2で録音すれば、まったく駆動音が発生しないのですから、人の話す声だけを手軽に、聴きやすく録れます。