ネットの動画共有サイトのYouTubeに動画をあげる、いわゆるVloggerたちは、自分の姿をカメラで撮影し、自分の声をマイクで収録します。
自分が話す声をより明瞭に録音するため、彼らの多くは、撮影機材と共に、録音機器のマイクにも関心を持ちます。そんな彼らが、性能の良いマイクに出会うと「神マイク」などと称えたりします。
その動画を見たほかのVloggerたちが後追いでそのマイクを自分でも使い、「神マイク」であることを追認したりします。
そんな彼らの動向を、やや冷ややかに桜風涼(はるかぜ・すずし)氏(1965~)がご自身の動画で話されています。桜風氏は、長年にわたって映画やテレビ番組の製作に関わり、音に関しても専門家です。
桜風氏は、どんなに高価なマイクでも、使い方を誤れば、綺麗に音を録れないと話されています。その逆で、どんな安価なマイクであっても、正しい使い方をすれば、Vloggerたちがいう「神マイク」にもなる、と話されており、興味深く拝見しました。
私はこのところずっと、手持ちのマイクで自分の声を録るテストをしています。
昨日更新した分では、ZOOMのフィールドレコーダー F2に付属するラベリアマイク(ピンマイク)のほか、VM-Q1、audio-technicaのAT9912という3本のマイクで自分の声を録り、その結果をまとめました。
昨日出した結論では、同じように録音しても、マイクそれぞれの個性が出る、というようなことでした。
本ページの更新をしたあと、昨日のうちに、さらにテストをしました。
私が求める声は、低音が感じられる声です。それを得るには、マイクに口を近づけて録音する必要があります。
ZOOM F2付属のピンマイクは、あごの下あたりに取り付けて録音しましたが、低音が感じられる音になっており、それ以上の実験は必要ないように感じました。
さらに実験が必要に感じたのは、思ったほどの結果が得られなかったVM-Q1とAT9912です。
マイクから口を話し過ぎたことが、低音が思ったほど得られなかった原因だと考えました。
そこでまずは、VM-Q1を、前回の実験より口に近づけて録音してみました。実験に利用したのは、前回と同じで、江戸川乱歩(1894~1965)が残した文章の次の一節です。
人間 は 心 の 奥 に、 現実 の 自分 と 全 くち が つた もの にな つて 見 たい 願望 を 持つ て ゐる。 古来 の 文学 の 中 に「 変形 譚」 といふ 一つ の 系列 が 存在 する のが、 その 証拠 で ある。
江戸川乱歩. 江戸川乱歩 電子全集19 随筆・評論第4集 (Kindle の位置No.12710-12711). 株式会社小学館. Kindle 版.
その結果、VM-Q1でも満足できる結果が得られることがわかりました。その音声ファイルを下に埋め込んでおきます。
悩ましかったのはaudio-technicaの小型マイクAT9912です。
同じように、マイクに口を近づけて録音すると、私の息がマイクに吹きかかり、大きな風切り音のようになりました。これは「ポップノイズ」といわれる現象で、プロの録音の現場では、このノイズは厳禁で、録り直しの対象になるそうです。
録音に使ったZOOM F2は32bit floatで録音できることが売りとなっています。この方式で録音する場合は、録音時に入力レベルの調節が不要とされています。ということは、どんなに大きな音や小さな音でも、編集でどうにでもなるということです。
そんな32bit floatですが、苦手なものがあります。それが風切り音であることがわかりました。こればかりは、編集でもどうにもなりません。マイクに吹きかかる「吹かれ」といわれる雑音は、風切り音の一種といえましょう。
このポップノイズも、音割れを起こしているわけではありませんが、ノイズには違いなく、それだけを消すこともできず、困りものです。
VM-Q1でそのノイズが生じなかったのは、そのマイクには、強い風にも耐えられるであろう毛がふさふさついた風防を付けて使っているからです。今回のテストでも、その威力のほどがわかりました。
AT9912に付属する風防は、スポンジ状のものです。これだけでは、風や人の息で発するノイズを防げないようです。
そこで、その風防をVM-Q1から外し、AT9912につけ、その状態で録音のテストをしてみました。その結果の音声ファイルを下に埋め込んでおきます。
結果は良好なものでした。
今回のテストで、ZOOM F2を使い、私が持つ三つのマイクでも、自分の声を良好に録れることがわかりました。
もうひとつ、このテストでわかったことは、32bit floatの唯一ともいえる弱点です。それは、風が吹く中での録音であろうことで、それは、息がマイクに吹きかかるポップノイズにも気を付ける必要がある、ということです。
これさえ気を付ければ、ほとんどの場合で、ZOOM F2とマイクを使った声の録音は、ベストに近い選択といえそうです。