この頃は、音に関することに時間を費やしています。
今は、ネットの動画共有サイトのYouTubeに代表される動画に多くの人の関心が向かっているものと思います。私も動画は昔から一番の関心事です。ですから、YouTubeは毎日利用しています。
専門知識を持つ人もYouTubeをプラットフォームのひとつとして利用していますが、専門家でない人の動画が多くを占めるでしょう。
動画作りを好むYouTuberや、動画を毎日配信することを目指すVlogerは、画作りに時間を費やし、より良い画を撮るため、カメラ機材などに資金を投入したりするのではないでしょうか。
冒頭に書いたように、私は最近になり、音に興味を持つようになりました。きっかけは、YouTubeで音の専門家である桜風涼(はるかぜ・すずし)氏(1965~)に出会い、関連の動画を数多く見るようになったことです。
また、桜風氏の影響を受け、桜風氏が動画で紹介していたZOOMのフィールドレコーダー、F2にも関心が及び、自分でも購入して使うようになりました。

また、録音した音声をより良い音にするiZotopeのソフトも使うようになるなど、数カ月前まではほとんど意識していなかった音周りに関心が向かい、日々、音に関することを試したりして、楽しく過ごしています。
最近は、自分の声を良い声で録音するにはどうしたらいいか、といったことを試しています。
自分でも使い出したフィールドレコーダーのF2は、32bit floatで録音できることは、本コーナーで書きました。専門的な原理は理解できていませんが、実際に自分で使ってみて、画期的な技術であることは何となくわかりました。
そのF2を使い、江戸川乱歩(1894~1965)の全集に載っている随筆を朗読しては、録音することをしています。F2は、人の声を録るのに適した機器で、付属するラベリアマイク(ピンマイク)を胸元につけて録れば、失敗なく自分の声が録音できます。
私の場合は、録音した声が小さい場合が多いですが、iZotopeのRX 9 Standardというオーディオ・エディターを使い、Gainを上げれば、いくらでも大きな音にできます。このあたりが、32bit floatの本領発揮といったところでしょう。
他の人がどうなのかわかりませんが、私の場合は、F2にピンマイクをつけて録った自分の声が、もうひとつ良い声に聴こえません。原因は、素人考えですが、声の低音が足りないせいだろうと考えます。そう思っていたところ、次の動画をYouTubeで見つけ、本サイトで紹介したばかりです。
本動画は内容が参考になりましたが、配信者が動画で説明する声が、とても良い音に聴こえます。
はじめの方で、YouTuberやVlogerについて書きましたが、外国の人のことは別にして、日本のそれらの人が配信する動画の多くは、思わず聞き耳を立てたくなるような音であることは少ない印象です。
すぐ下に埋め込んだのは米国の配信者の動画です。この人の動画は以前から見ていますが、どれも良い音で録れている印象です。マイクを口に近いところに設置していますね。
数多くの動画を配信する人で、自分を画面に登場させてしゃべる人は、それなりにいいマイクを使っているでしょう。しかし、聴きやすい声ではあっても、思わず「いい声だなぁ」と思うことは多くないです。
多くのYouTuberやVlogerは、マイクが画面に写り込まないようにマイクをセッティングするか、ピンマイクを胸元につけていることが多いです。それで十分聴きやすい声は拾えますが、もう一段上の声質には達していないように感じます。
その原因と対策は、本ページで紹介した動画の配信者が話してくれています。
特別高価なマイクは必要ありません。肝心なのは使い方です。本ページで紹介する動画の配信者は、マイクは安いコンデンサーマイクでいいから、マイクに近づいて話すよう勧めています。
どのくらいまで近づくかですが、マウスクリップを防ぐためのポップガードに口がつくぐらいまで近づけて話すよう勧めています。距離にすればマイクから10センチ程度です。
意外とこのことは、守っていない人が多いかもしれません。YouTubeの配信者の動画を見ると、そこまでマイクに近づいて話している人は少ないです。
本ページで紹介した動画の配信者が定義する「良い声」は、低音がしっかり収録できていることです。そして、人の声は、マイクから離れた途端、その低音が失われ、マイクで収録できないそうです。
私が理想とする「良い声」も、この動画の配信者と同じです。少し前に本コーナーで私は、弦楽器を録音するように声を録音する、というようなことを書きました。意味するところは、低音を綺麗に録りたい、ということです。
良い声で録音するため、いろいろに試し、今は、PCに私が持つコンデンサーマイクのMXL-V67をつけ、録音することを始めました。このマイクも、特別高いものではありませんが、F2に付属のピンマイクより、低音を拾ってくれます。

また、録音に使うソフトとして、F2を購入した時に特典として入手できた、スタインバーグ社のWaveLab Castを使い始めました。
このソフトでも、32bit floatで録音できます。ということは、入力レベルを神経質に決めず、録音できてしまいます。
また、このソフトには、扱う音声ファイルの出力レベルを、プリセットによって手軽に設定することができます。
プリセットは、音楽を配信するAmazonやApple、Spotifyのほか、YouTube、Netflixなど、各サービスが推奨する設定が11使えるようになっています。いろいろ試してみました。Apple Podcastがあり、これが、私の独り語りには良いのかと思い、これを使うようになりました。
どこまでいっても自己満足ですが、そのようにして録音した自分の声が、低音も十分に感じられ、良く聴こえるように感じます。
WaveLab Castで録った自分の声を、iZotopeのRX 9で、ノイズなどを消し、MP3ファイルにしてみました。朗読の出来不出来は無視して、まあまあの声に録れていると思いますので、下に埋め込んでおきます。労働した内容は、江戸川乱が終の棲家となる東京の池袋三丁目に引っ越したときのことを書いた文章の一部です。
池袋三 丁目に移転
芝区車町の家は高輪の大木戸あとに近く、京浜国道と東海道線からすぐの場所にあつたので、土蔵の洋室が気に入つて住みついては見たものの、汽車と電車と自動車の騒音が、だんだん耐え難くなつて来た。汽車はときたまだけれども、電車と自動車はひつきりなしに走つているので、殊に自動車のクラクションの音が、神経衰弱になるほど、身にこたえた。一年ほどは何とか辛抱したが、もう我慢ができなくなつて、二た月ばかり借家を物色したあとで、池袋三丁目の今の住居を見つけて、七月に引越しをした。
池袋の家にも昔風の土蔵がついてい た。実はそれが気に入つたのである。地面も広く三百五十坪あり、平家建てで、八、六、六、四半、四半、四、三、三、三、二の十室に湯殿。土蔵は二階建てで延坪十五坪であつた。家賃は月九十円、大きな門がついていて見かけもなかなか立派であつた(但しこの門は後に戦災で焼失した)庭木も豊富であつた。私は土蔵の階下に、車町の洋室の書棚を運ばせて取りつけ、例の彫刻のある大机もそこに置いて数年の間は、この土蔵の中を書斎に使つていた。夏は冷々してよろしいが、冬は寒いので、反射式でなく、動力線を引かなければ取りつけられない、環流式の電気暖房を設けて、寒さを防いだ。
貼雑帳を見ると、池袋に引越した当座は、また新聞雑誌社の訪問があつたようである。文士というものは、度々引越しをすると、その度に新聞や雑誌に新居の写真などが出て、宣伝になるという説があつ たが、なるほどそういうこともあるなと感じ たものである。
江戸川乱歩. 江戸川乱歩 電子全集19 随筆・評論第4集 (Kindle の位置No.11532-11545). 株式会社小学館. Kindle 版.