私は今、音への興味が強まっています。
そのきっかけは、動画における音について、ネットの動画共有サイトYouTubeで語る桜風凉(はるかぜ・すずし)氏(1965~)に出会ったことであることは、本コーナーで既に書いた通りです。
どんな分野でも、専門家の話を伺いますと、底知れぬ深さがあることがわかります。桜風氏は、映像制作を請け負う会社を経営されており、その方面には実践経験を伴う非常に詳しい知識をお持ちです。
私はこれまで、桜風氏は、録音方面を中でも専門にされているように認識していたのですが、直近にYouTubeに上げられた動画を見ますと、ビデオエンジニア(VE)の経験もお持ちで、メーカーに助言されるほど、映像における色作りにも詳しいことがわかります。
桜風氏のYouTubeチャンネルにある動画は、7、8割は拝見しました。そのどれも、内容が深く、見ていて飽きません。
そんなこんなで、音方面にも興味持つ人間に替えられてしまいました。
その影響で、32bit floatによる録音機器があることも知り、興味を持った勢いで、一番安く手に入るZOOMのF2を手に入れて使い出したことは、本コーナーでも書きました。
F2のようなレコーダーは、YouTubeでVlogをするような人が使うと、最も真価を発揮できそうです。
私は自分の顔を出してしゃべるような動画を作るつもりはなく、F2の良さを活かせないタイプの人間といえましょう。それでも、F2に接続したラベリアマイク(ピンマイク)で自分の声が手軽に録れる便利さは実感できました。
ですので、F2を使った録音は、これからも便利に使うつもりです。しかし、自分で録った自分の声を聴くと、何かが足りないような感じが正直いってあります。
私の動画の作り方は、本コーナーでも書きましたが、Vloggerのように、カメラを廻しながら同時にしゃべるような作り方は基本的にしません。
8ミリ映画を昔に道楽で楽しんだ影響を未だに引きずるところがある、のかもしれません。
8ミリ映画は、一番最後の頃になって音を同時に録れるフィルムが登場し、同時録音ができるようになりました。
逆にいえば、それまでは同時録音ができませんでした。凝る人であれば、フィルムと一緒にテープレコーダーを廻し、フィルムの映写とテープレコーダーの再生を同期させるようなこともしたでしょう。でも、日常的な記録フィルムで、そこまでやる人はいませんでした。
そんなわけで、素人が撮った8ミリフィルムは、ほとんどがサイレント映画です。それで、不自由には感じませんでした。
私もあとの方になって、編集済みのフィルムにテープレコーダーのテープを塗布してもらうサービスを利用し、その磁気帯にあとで音をつけるようなこともしました。その場合は、アフレコによる音付けです。
8ミリ映画をそんな風に作って楽しんだ経験があるからか、デジタルによって動画を作る時も、ナレーションなどを入れるのであれば、アフレコで入れるのを好みます。
自分の動画に自分の声を入れるため、MXLというメーカーの”V67″というコンデンサーマイクを購入し、これまで使っています。
このマイクを使って吹き込んだ自分の声と、F2にピンマイクを接続して吹き込んだ自分の声を比較すると、便利さを度外視すれば、V67に軍配を上げざるを得ません。
桜風氏が動画で話されているように、あるいは、同氏が本でお書きになっているように、マイクは目的に応じて使い分けてこそ活きる道具です。
ピンマイクは、テレビ番組の収録では欠かせないそうです。このマイクを出演者に付けておけば、ショットガンマイクを使って音を懸命に拾う苦労がないばかりか、それぞれの人の声を間違いなく録れるそうです。
テレビ番組を見る人は、番組に出演している人の声を、もっと良い声で聴きたいと考えたりはしないしょう。しゃべっている声が聴こえ、何をしゃべっているのかがわかれば、それだけで満足するはずです。
YouTubeを舞台に活動するVloggerでも同じことがいえます。動画を見る人は、聴き取りにくい声でなければ、それ以上は求めません。
しかし、その声に何かを求めようとした場合、多くの映像制作現場で使われているであろうピンマイクやショットガンマイク以外のマイクが求められるように思います。
そこに登場してくるのが、スタジオ録音用に作られたコンデンサーマイクです。
桜風氏が著作でも、映像制作現場でスタジオ用マイクは、収録される音の扱いが繊細になるので、使いにくく、実際に使ってはいない、というようなことを書かれています。
私が使うV67にしても、通常のピンマイクやショットガンマイクなどと比べて、感度が高く作られています。微かな音も拾います。ですから、環境音のあるところで、こんなマイクは使うわけにはいきません。
出演者の声を拾おうとして、マイクボリュームを上げると、必要のない環境音までが一緒にマイクで収録されてしまうからです。
しかし、こんなマイクを、比較的静かなところで、自分の声を録るのに使うと、他のマイクでは録れない、厚みのある声に録れるように、素人の私は感じたりします。
私は昨日、あることを試していて、あるソフトの素晴らしさに気がつきました。
一年ほど前、Blackmagic Designの動画編集ソフトのDaVinci Resolve Studio(DaVinci)を購入すれば、ほぼ同価格の同社のカット編集に特化した編集キーボードのSpeed Editorが付属するキャンペーンをしていたとき、これから取り上げるオーディオ・ソフトを手に入れました。
その対象者を含むBlackmagic Designユーザーは、IZotopeのRX 8 Elements(RX 8)というソフトが無料で使えるという情報を得て、私もダウンロードして、インストールしています。
しかしそれから一年ほど、インストールしたRX 8は使わずじまいでした。
それが、数カ月前から急に音に強い関心を持ち出したことで、RX 8の使用頻度が急に増えました。レコーダーのF2を導入以降は、RX 8なしには考えられないほどです。
こんな風に、使って初めてRX 8が持つポテンシャルの高さを嫌というほど知りました。
そのRX 8を昨日になって初めて、マイクを使った自分の声の録音に使いました。
動画編集ソフトのDaVinciで、アフレコができるようになるまでは本コーナーで取り上げました。
そこで書いたように、V67のマイクで動画にあとから自分の独り語りを入れることはできるようになったのですが、別のことでそのマイクが使えず、困った状態にありました。
V67というマイクを、PCのソフトで使うには、PCにUSBで接続するオーディオインターフェースが必要です。
V67を使い出した時、オーディオインターフェースを一緒に購入して使っていますが、それまで、自分の声を録音するのに使っていたオーディオ編集ソフトが、オーディオインターフェース経由のマイクの音に応じてくれず、録音できない状態が続いていたのです。
今は独り語りのコーナーは持っていないので、すぐに困ることはありません。しかし、何かのときにそれができないのでは困ると考えていました。
そう思っていたとき、RX 8で声の録音ができるのでは、と思いつきました。
で、昨日、それを試しました。そのためには、録音デバイスなどの設定が必要です。それが済み、初めて録音したのが次の声です。
録音された自分の声を確かめ、ピンマイクで録った自分の声とは根本的な違いがある、と感じました。声のいい悪いとは別に、声の存在感といいますか、音の厚みのようなものが全然違うように私には思えます。
もっとも、テレビ番組や映画に出てくる人がみんなこんな声であったら、重ったるくて聴いていられないかもしれません。もっと、いい意味で軽い音のほうが、耳馴染がよく、長い時間聴いていられるでしょう。
考え方を変えれば、V67で録った声に感じるのは、弦楽器の音を生で聴くような感覚(?)でしょうか。
ともあれ、テレビ番組に出てくるタレントやYouTubeのVloggerの声を録った音とは異質な音を、私は好んでいることになりましょうか。
良し悪しは別にして、そんな声で録れるRX 8は、ますます、私にはなくてはならないソフトになりました。
そんな私にも見逃せないセールをiZotopeはしています。
5月3日までの期間、「音声編集の黒魔術セール」と題して、同社のソフトが最大で75%安く手に入れられるセールをしています。
途中でも書いたBlackmagic Designのユーザーであれば、たとえば、RX 8の後継であるRX 9 Standardが、72%オフの14,000円で手に入れられるチャンスです。私も、期間内に、これを手に入れたい気分が満々です。
最上位ソフトのRX 9 Advancedの方がいいのでしょうけれど、こちらは50%オフの50,500円ですから、躊躇ってしまいます。
このように、私は目下、音の沼にはまった状態にあるといえます。
それがどんな沼であれ、そこにはまった者でなければ見えてこない風景があります。私は、しばらくは、そこからしか見えない音の風景を眺め、それまで知らなかったことを少しでも得ようと思っているところです。