私の家では朝日・日経・産経・地方紙の4紙をとっていますが、本日の日経に載っていたある記事に目が留まりました。記事の大きさをおおよそ測ってみると、縦が10センチ、横が12.5センチぐらいの小さな記事ですから、本日の日経を読む人も、見落とす人がいるかもしれません。
その記事が伝えるのは、JVCケンウッドが、昨年2021年10月で、国内向けのビデオカメラの製造を終了したことです。
私が映像に強い興味を持つことは、本コーナーで何度も書いています。今はJVCケンウッドといわれる企業が、昔は日本ビクター(ビクター)の企業名で知られていました。ビクターの時代、その企業は最も輝いていたのではないかと思います。
昔、日本で家庭用のビデオ機器が誕生しました。規格は2種類あり、ビクターが開発したVHSとソニー開発のベータマックスです。私はどちらの方式を使うか迷い、結局、ビクターのVHSを選びました。
性能は、もしかしたらベータマックスの方が上だった(?)かもしれませんが、VHS陣営に、強い販売網を持つナショナル、今のパナソニックが加わったことが決定打となり、覇権を握る結果に落ち着いています。
私の家では、ビクターのビデオデッキで、民生用として発売された2号機を購入しています。初めてそれでテレビ番組を録画した時の驚きは今も忘れません。放送されている映像と変わらない映像が、ビデオテープに録画でき、再生できたからです。
ビクターはテレビ番組を録画するデッキばかりではなく、持ち運びできるビデオレコーダーも開発して販売しました。しかし、当時の技術では、持ち運びできるといっても、テレビ番組を録画するデッキからテレビチューナーを省いただけのような大型で、レコーダーだけで4、5キロあった(?)ように記憶します。
そのレコーダーに接続して撮影できるビデオカメラも登場しました。それらを購入し、家族を録画しては楽しみました。
ビデオカメラは、放送局のビデオカメラのように、肩に担いで使用しました。ビューファインダーだけで今のビデオカメラぐらいあり、重さは2キロぐらいあったのではない かと思います。ビデオレコーダーと併せて7、8キロになり、加えて、レコーダーとカメラをつなぐケーブルも太いもので、こんな一式を担いで外へ撮影に出かける気にはなりません。
そんな希望に答えるように、同じビクターから、VHS-C規格のレコーダーを搭載したビデオカメラが登場しました。その製品を私は購入しませんでしたが、そのビデオレコーダー付カメラを見て、これなら外へ持ち出してビデオ撮影できると驚いたものです。
今はスマートフォン(スマホ)で手軽に動画の撮影ができます。今と比べると笑い話のようなビデオ事情ですが、当時としては非常に画期的な技術と感じました。
そんな歴史を持つビクター、今のJVCケンウッドの主力分野であった家庭用ビデオカメラの生産が、昨年10月をもって、国内向けが終わってしまったのは、時代を感じさせます。
日経の記事によりますと、ビクターやJVCのブランドで、累計3600万台の家庭用ビデオカメラが国内外に出荷されたそうです。
しかし、動画撮影機能を持つスマホが普及したことで、全体のビデオカメラ市場が最盛期の約1割にまで落ち込み、今後、縮小に歯止めがかからないことから、国内向けカメラの生産を終了せざるを得なかったようです。
この日経の記事を読むことで私が初めてしったことがあります。それは、キヤノンの動向です。
キヤノンの家庭向けビデオカメラに「iVIS」ブランドがあり、私もそのブランドのビデオカメラを今も愛用しています。そのブランドのビデオカメラは、JVCケンウッドより約3年前の2019年12月をもって、国内向けカメラの生産を終了したようです。私はまったく気がつきませんでした。
私はカセットテープ方式のデジタルビデオカメラを持っていますが、それはキヤノン製です。それを持って、いろいろなところで撮影し、ネットの動画共有サイトのYouTubeに投稿する前は、本サイトのサーバにそのカメラで撮影した動画を上げています。
そんなよしみもあり、コンパクトなビデオカメラ2台は、JVCケンウッド製とキヤノン製です。JVCケンウッド製のカメラが昨年、気がつくと電源が入らなくなって使えなくなり、今は、キヤノンのiVIS HF M41がビデオカメラとしては唯一のものです。
キヤノンのビデオカメラは、中古で売りに出されているものにたまたま気がつき、慌てて購入しています。たしか、1万数千円であったと記憶しています。以来、故障することもなく、現役です。
最近、このビデオカメラで面白い映像が撮影できることに気がつき、時間がある時は遊んでいます。
本気には、映画風の映像が撮れる機能が搭載されています。全部で8種類のプリセットがあるのですが、その中の私のお気に入りは「オールドムービー」です。
プリセット名から想像できるように、このプリセットを選ぶだけで、現実の風景が昔の映画フィルムで撮影されたかのように記録できます。
まず、画面の比率、アスペクト比が、このプリセットだけ16:9ではなく、横幅がシネマスコープ比率の2.35:1になります。これだけで、ぐんと映画らしく見えます。画面の上下に黒い帯が入るしシネスコですので、「なんちゃってシネスコ」ですけれど。
これに加えて、年代を経たフィルムの味を出す効果が加わります。
映像は毎秒60インターレースで撮影されますが、フィルムで撮影したことを匂わせるように、気がつくか気がつかないぐらいのごく微かなフリッカーが入ります。撮影した動画を再生すると、フィルムが息をしているように見えます。
また、画面には、フィルムの映写傷のようなものが入ります。傷は縦に黒い傷がランダムに入ります。これはちょっとやりすぎの気がしないでもありませんが、私はむしろそれを楽しんでいます。
撮影したままでは彩度が低く感じますので、動画編集ソフトのDaVinci Resolve Studioで色とコントラストを多少調整します。
私は写真を撮るときはRAW画像ですが、私が撮った写真のRAW画像で色を調整することはしません。明度を、多くの場合、若干下げることだけです。
DaVinci Resolve Studioを使えば、色味を大きく変えられますが、動画の場合も、私は色味には極力手を入れないことにしています。
色味の調整をするのは自分のPC環境が基になります。そこで望む色味にして、自分だけで見ている分には問題が生じません。しかし、それをもしもネットで配信するのであれば、万人に的確な色味にする方法がありません。また、万人のディスプレイの見え方を確かめようもないです。
もしかしたら、ある人のディスプレイでは、非常によくない色味になっているかもしれません。そんなことを考え、私は静止画も動画も、色味は撮影されたときのものを尊重し、変更しないようにしているのです。
最後に、JVCケンウッドが日本向け家庭用ビデオの生産終了を伝える日経の記事にもう一度戻ります。
その記事の最後には次のように書かれています。
「ハンディカム」シリーズで知られるソニーは、18年2月以降新製品を出していない。
個人的には、動画を個人が撮影するのであれば、ビデオカメラが最も適していると考えています。しかし今後、そのカメラが開発・販売されないのであれば、それに順応していくよりほかなくなります。
当面は、キヤノンのiVIS HF M41を故障して使えなくなるまで使うことにしましょう。本器では4Kの撮影ができませんが、私は4K画質を必要と感じていませんので、障害にはなりません。