安く本と戯れる師走

12月も中旬となり、今年も残すところ3週間です。仕事をしている人は、年末に向けて仕事が忙しくなったりするかもしれません。私はといえば、これといって、師走という感じがしません。

世の中には「年末商戦」というものがあります。Amazonの電子書籍、といいますか、その部門に書籍を提供する出版社の商戦なのかどうか、今月16日までの期間、該当する電子書籍に50%のポイント(1ポイント1円)が還元されるサービスを提供しています。

本日の豆ポイント
今年の7月、20%か30%のポイントがつくとき、村上春樹の本をまとめ買いしたことで、今日現在、Amazonのポイントが【4054ポイント】貯まっています。このあともポイントを貯め、何かのタイミングで、ポイントを使うことにします。

私もそれを知り、何かめぼしい本はないかと調べました。結果的には、私が小説で読みたい本は対象でないことが多く、恩恵にあずかれませんでした。ただ、小説以外の分野で、お勧めされた本や、以前気になって、電子書籍端末にサンプル版をダウンロードしてあった本が対象商品であることを知り、購入したり、購入を検討し始めたりしました。

昨日購入して読み始めたのは、『森山大道 路上スナップのススメ』2010)です。森山大道1938~)は、知る人には説明が必要ありませんが、知らない人のために書いておきますと、写真家で、路上スナップをメインに長年活動されている方です。

森山も今年83歳ですから、世間的には高齢ですが、未だに現役として創作活動をされているようです。本書が出版されたのは2010年ですから11年前になり、そのとき、森山は72歳です。

写真家の「アラーキー」こと荒木経惟(あらき・のぶよし)1940~)は知っている人がいるかもしれません。

アラーキーが若い頃にゲリラ的に撮影した白黒の写真に、森山が一緒に写っていたりします。ふたりは表現方法が似ていて、有名になる前からともに活動をしたりしたことがあったのでしょう。

アラーキーの『写真ノ説明』を読んでいたら、最後の「特別付録(2)写真の『仕掛け』」に、1970年代半ば頃、写真家仲間6人で一緒に活動したことが書いてあります。

70 年代の半ば頃に、写真家仲間とワークショップ写真学校ってのをやったんだよ。講師陣は俺の他に、深瀬昌 久19342012)、東松照明1930年~2012)、横須賀功光19372003)、細江英公1933~)、森山大道の5人。

荒木 経惟. 写真ノ説明 (光文社新書) (Kindle の位置No.690-692). 光文社. Kindle 版.

写真家仲間に森山の名前もありますね。おそらくは勢いで始めたようなこと(?)で、印刷屋の2階か何かを借りて教室にしていたみたいです。生徒が予想外に増えて、「写真家は写真を撮らなきゃいけないのに、教えることが仕事になっちゃったらダメだろう」(荒木 経惟. 写真ノ説明 (光文社新書) (Kindle の位置No.694-695). 光文社. Kindle 版.)」ということで、グループでの活動は2年ぐらいで解散した、とあります。

そのあともアラーキーは個人的に、生徒と「写場(しゃば=東京の街中)」に出て、写真の表現をする上で欠かせない(?)、年功序列や義理人情、男尊女卑について教えたそうです。

ま、これはアラーキーお得意の茶化したいい方で、実際のところは、それぞれの人の個性を見抜いて、それを本人に自覚させるようなことをしたようです。

1970年代といえば、夜の大人向けテレビ番組に「11PM」19651990)というのがありました(この番組の後釜として、「EXテレビ」〔1990~1994〕が放送されています)。この番組にも、もしかしたらアラーキーが押しかけで出演するようなことをしていたのを憶えています。アラーキーはその当時から、自分で自分を「天才」といっていました。

11pmのテーマ

森山で特徴的なのは、ジーンズの後ろのポケットに入るような小型のカメラを使って撮影することです。森山はそんなカメラを手に持ち、街中へ飛び出し、街全部を記録するような勢いで、シャッターを切っていきます。

『GR Special Talk』森山大道 × 野口智弘 — [CP+2021 リコーイメージング オンラインセミナー]

本作では、その森山のスナップ撮影に対する考え方を仲本剛氏が訊き、それに森山が答える形で文章にまとめられています。森山はすべて話し言葉で、カギカッコの中に収まっています。

「序章」では「スナップとはなにか」について聞き書きし、「終章」では、まだ読んでいませんが、「森山大道とは」で森山の人物像について書いてあるのかもしれません。

本編は、次の章分けで、東京都内の5地点で森山が実際に撮影し、それに同行した仲本氏が、撮影の合間に森山に訊いた話や、森山の撮影についてまとめられています。

砂町好適な修羅場、商店街
佃島水辺のスナップ
銀座デジタルことはじめ
羽田風景写真と絵葉書の写真
国道スピードのなかで擦過する視界

当然のように、実際に撮影した作品が多く紹介されています。このような形式になっているため、私が通常、電子書籍を読むのに使っている専用端末のKindleは白黒しか表現できず、画像の扱いも不得手ですので、タブレットPC(私が使うのは10インチ)に入れたKindleアプリで読んだり、写真を見たりしています。

私は最初の「砂町」までしか読んでいません。その冒頭、森山は次のように述べています。

「商店街というのは、あらゆるものが混在する場所。さまざまなものが撮れるし、人間も撮れる。スナップワークのレッスンに、これほど格好の場所はないんだよ」

森山は、どんな商店街に撮影に行っても、必ず往復して撮影するそうです。影ができるほど晴れていれば、往復で光の状態が逆になり、同じ被写体であっても、違った表現ができるというわけです。

森山は圧倒的な量の撮影をし、デジタルに変わるまではもちろんフィルムで撮影していますが、100メートルの通りを歩いて通る間に、フィルムを何本も使うそうです。

漠然と写真を撮ってもしようがない。「こだわりを持って撮れ」と森山はいいます。学生に教える時も「家一軒でフィルム10本撮れ」といったりしたそうです。「なんでもよく見てすべて写せ」が森山の口癖で、撮って撮って撮ることで、ようやく見えてくるものがある、と森山自身が暗中模索して自分のスタイルを作っていく中で獲得した写真哲学が本書には詰まっています。

今回は、1冊の本を一気に読むのではなく、何冊もの本を並行して読んでいこうと考えています。ということで、再び森山の本に戻った時は、二章目の「佃島」の”撮影現場”に立ち会わせてもらいましょう。

今回は写真に関する本が結果的に多くなりました。ま、私がフィルムの時代から、好きで写真を撮ったり、カメラを愛でたりしているからの結果でしょうが。

50%のポイントが付く本では、『木村伊兵衛傑作選+エッセイ 僕とライカ 』2019)もサンプル版をタブレットPCにダウンロードしました。木村伊兵衛19011974)は、いってみれば森山の大先輩で、ライカという超高価な小型のカメラを手にした街中でのスナップの先駆者です。

本書は、今日中に購入する予定です。

内容は、木村が残した傑作の作品と木村のエッセイです。次の章に分け、写真やカメラなどについて書いているようです。

自伝からライカについて出会いと別れなにを、どう撮るか対談

すでに名前が出てきたアラーキーの本は、その会員であれば、追加料金なしに読むことができるKindle Unlimitedで読める次の4冊をストックしました。

写真ノ説明2016天才と死2013アラーキー語録 人間、泣かなくちゃ。2007いい顔してる人 生き方は顔に出る!(2010)

『写真ノ説明』はほとんど読み終わるところです。例によって、4冊に共通して、「アラーキー節」が炸裂しています。読んでいて元気になりますね。たとえば、『写真ノ説明』では次のように、本書のコンセプトのようなものを解説しています。

それから言うまでもないけど、「写真ノ説明」 と「 説明的な写真」てのはまるで違うよ。

説明的な写真っていうのはダメ。見る人にイメージや解釈を押しつけてるようなものは、文学だろうが映画だろ うが、受け手の想像力を奪っちゃうもの。

写真や絵は見るものと思うだろうけど、いい作品は受け手に「読む快楽」も与えてくれるもんだ。だから今回、アタシはこの本で自分の写真の説明をしながら、読者に「写真を読む」ことの楽しさも伝えられたらいいね。

荒木 経惟. 写真ノ説明 (光文社新書) (Kindle の位置No.10-15). 光文社. Kindle 版.

アラーキーの場合は、写真にしても、彼が発する言葉にしても、常にレトリックのようなものが裏にあり、それを目にしたり、耳にしたりする人を気持ちよく騙す要素があります。彼自身が、「アタシは騙すのが上手だから」と事あるごとにいっていますから、本人も自覚してそれをしています。

ビジュアル本としては、これらもKindle Unlimitedを利用し、次の2冊を仕入れました。

西洋絵画の巨匠100人: ①ルネサンス誕生西洋絵画の巨匠100人: ②ルネサンスからバロックへ

本のタイトルからわかるように、西洋の古典絵画の巨匠たちをルネサンス期からバロック期にかけて紹介する本です。これもビジュアルが豊富に盛り込まれているため、タブレットPCを使わなければ快適に楽しむことはできなそうです。この本なども、数ある本を並行して手にしながら、時折、目を楽しませるようなつもりで、見ていくことにします。

Kindle Unlimitedに該当する本としては、前回取り上げた菊村到の短編集があったので、これも読んでみようと思っています。『耳の中に誰がいる』1987)という本です。本短編集には、表題作を含めて20作品が収録されています。

小説家の本としては、同じくKindle Unlimitedで読める水上勉19192004)の『閑話一滴』2015)というエッセイ集を手に入れました。水上は苦労して育っていますが、当時のことなどが綴られているのでしょう。

それと知らずにサンプル版に目を通した本が2冊あります。次の2冊です。

天才と発達障害2019NISAで利回り5%を稼ぐ 高配当投資術 なぜバフェットは日本株を買うのか(2021)

投資の本は、窪田真之氏が書かれたものです。これは確か、株価が不安定だった頃、何かの参考になるかと思い、出たばかりの本をサンプル版を確認したものです。

NISA枠で長期投資したい割安・高配当利回り株10選(窪田 真之)

上の2冊は50%のポイントが付与される本に該当します。気になったら、16日までに購入することも考えます。

最近また読みだしたのは、『江戸川乱歩 電子全集』です。私が購入したのは全部で5冊あり、まだ読んでいなかった2冊にまた取り掛かりました。

江戸川乱歩は信じられないほどの記録魔と蒐集家の面を持ちます。乱歩邸にあった倉は書庫になっており、その中に乱歩の書斎もありました。

乱歩は自分の作品や、作品が映画化されてそれが新聞に載ったりすると、切り抜いてすべて保存することをしています。また、様々な雑誌に随筆を書いたものまで、できる限り保存してあり、それが年代順に電子全集に収められています。

当時の内外の推理小説も丹念に読んでおり、その書評も数多く書き残しています。

このように、大量の文章が満載となっており、全集の1冊読むだけでも大変です。それが5冊もあるのですから、時間がいくらあっても足りないほどです。ただ、それを読むことで、構成に残った作品が書かれた頃の乱歩について知ることができ、非常に貴重です。

このことは以前の本コーナーで書きましたが、乱歩が『屋根裏の散歩者』1925)を書いていた頃、父の容態がかなり悪化しています。医療ではどうにもならなくなった父は、田舎の秘密宗教めいたものに頼り、三重県の山中にある、小さな小屋の中で過ごしていたそうです。

そこを乱歩が訪ね、『屋根裏の散歩者』の終盤を書いています。その時のことを思い出し、次のように書いています。

父の所から帰つてから書くのでは、『新青年』の〆切に間に合わ ない。私は仕方がないので、書きかけの原稿を持つて山へ旅立つ た。そして、父の病室の隣りの部屋で、机もないので、赤茶けた古畳の上に腹這いながら、「屋根裏」の終りの方を書き上げ、大いそぎで、山の下の町から郵送した。

江戸川乱歩. 江戸川乱歩 電子全集19 随筆・評論第4集 (Kindle の位置No.831-833). 株式会社小学館. Kindle 版.

それだからか、乱歩は『屋根裏_』の終盤は自分で納得してない書き方になった、というように述懐しています。

ここまでに何冊が出てきましたかね。11冊ですか。ほかに、Kindle Unlimitedで端末に入れた、阿刀田高1935~)の短編集『仮面の女』(1987)は7割ほど読み終わりました。また、星新一19261997)を特集した雑誌『遊歩人 2003年9月号 特集・星新一の奇蹟』も入れてあり、山田風太郎19222001)の『眼中の悪魔 山田風太郎ミステリー傑作選1』2001)もスタンバイしています。

今から30年、あるいはそれ以上前になりますか、英国のコリン・ウィルソン19312013)が書いた本をまとめて読んだ記憶があります。切り裂きジャック事件(1888)の犯人を推理する本もありました。彼の本が電子書籍になっていれば、また、読んでみたいと思っています。

ともあれ、世間的には何かと気ぜわしくなる時期ですが、私は気ままに、様々な本を手に取り、眼と心の保養に努めることにします。

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