フィルム映像のデジタル化

前回の更新で書いたことの続きです。

1988年3月10日深夜(実際は日付が替わった11日午前2時10分から)にフジテレビで放送された「春の楽しい電車」から、東京モノレールのシーンだけを抜き出し、動画に作り替えることを新たにしています。

そのために、アナログビデオの映像をPCに読み込むためのビデオキャプチャを年が明けてから購入したことを前回分で書きました。

過去の映像をデジタル化することはすぐにできました。問題なのは、色調の変更です。自分でやってみてわかるのは、客観的な正解がないように感じることです。どこまでいっても、自分の主観で色調を変更しているだけのように感じ、自信が持てません。

そんなことを考えているとき、昨年の12月、産経新聞に載っていた記事を思い出しました。12月3日に載った記事で、見出しは「名画を後世に 映画人熱く」「4Kデジタル修復 急ピッチ」です。見出しを見ただけで、記事に書かれていることがおおよそ予想できるのではありませんか。

映画監督のジョージ・ルーカス氏(1944~)あたりが先駆けでなかったかと思いますが、今世紀に入り、商業映画が、長い歴史を持つフィルムではなく、デジタルで制作されるようになりました。それがどの程度まで進んでいるのか、私はよく知りませんが、劇場での公開も、映画のデジタル化が進んだことで、フィルムの映写機ではなく、デジタルのプロジェクターで上映されるように急速に変わっているようです。

また、テレビやネットを使った有料配信のため、フィルムで制作された作品のデジタル化が急ピッチで進められているそうです。その動きを加速させるのは、2Kに比べて面積比で4倍になる計算の4K技術が登場したことでしょう。映画で1コマにあたる1フレームの面積サイズが4倍になれば、その分理論的には解像度が高くなるはずです。

本日の豆修正
4Kは2Kに比べて「面積比で4倍」というのは正確ではないですね。撮影できる撮像素子の範囲は変わりません。変わるのは、その面積における撮像素子の数が4倍程度になる、ということです。その分、撮像素子のサイズが1/4程度となります。このことは、デジカメの高画素画化競争に通じる話のように思えます。考えようによっては、低画素の方が、撮像素子1個あたりのサイズと撮像素子同士の空間に余裕が生まれ、その方が、改造間に良い面があるかもしれない、という議論が成り立ちそうに思わないでもありません。

それと同時に、フィルムが宿命的に持つ劣化を、デジタル化することで、なくせる利点が加わります。

映画のフィルムは、映写機にかけて再生されます。フィルムは生ものですから、映写の回数が多くなれば、その分、劣化が進みます。フィルムには目に見えないような小さな傷ができたりするでしょう。木の柱にできた傷が消せないように、フィルムの傷も物理的に消すことはできません。

今は目にすることがあまりないかもしれませんが、昔に作られた時代劇で、雨が降っているように見える作品もありましょう。フィルムにできた傷が多くなり、それが雨を思わせるほどになったフィルムに見られる現象です。

同様のことは、デジタルでは起きません。

ルーカス監督が初めてデジタルで映画を作ったと聞いたとき、どんな感じか確かめるため、劇場へ見に行ったのを思い出します。それを確認しようとスクリーンに目を凝らしましたが、フィルムとそれほど変わらないように感じたものです。

今はその傾向が強まり、デジタルで、フィルムと遜色ない仕上がりになっているでしょう。

産経の記事に戻ります。

記事では、実例として、増村保造監督(19241986)が昭和41年に撮った『赤い天使』の修復現場の様子を伝えています。

『赤い天使』(Red Angel)/1965/予告編

現場を取材していた記者の耳に、次のような声が聞こえてきます。

もうちょい、締めておこう。

うん。それぐらいにしまひょ。

声の主は宮島正弘氏です。記事で宮島氏について紹介していますが、修復していた増村監督の作品が撮られた年、宮島氏は大映京都撮影所に入社し、以来、映画のカメラマンとしてキャリアを積まれています。増村監督の作品にも多く関わったそうです。

それだから、私が個人的に最も好きな映画『タクシードライバー』1976)を撮ったことでも知られる映画監督、マーティン・スコセッシ氏(1942~)は、宮島氏を次のように評したそうです。

大映映画の完璧な修復指示は、宮島にしかできない。

Taxi Driver – Trailer

記者が取材した『赤い天使』は、モノクロ作品です。モノクロはカラーに比べて修復しやすいかといえば、そんなことはありません。白から黒への諧調は無限といえるほどあり、どのような画にするかは、結局のところ、誰かの主観に委ねるしかなく、委ねるのであれば、数限りない経験を持つ宮島氏以外にはいない、ということになるのでしょう。

4Kより、面積比で4倍の8K技術も登場しています。それなら、はじめから8Kでデジタル化したほうが良さそうに思います。が、産経の記事は、宮島氏の次のような説で締められています。

8Kだと繊細すぎるので、フィルムの修復には4Kが最適なんです。未来の映画人の「原版」となるような4K版を一本で多く残したい。

ネットの動画共有サイトのYoutubeを舞台に、頻繁に動画を上げる人たちがいます。その多くは、画質の向上を狙って4Kで動画を作る人が多くいます。中には、4Kでは飽き足らず、それ以上の8K、あるいはそれ以上の高画質を求める人もいます。

映像のプロである宮島氏の説を信じれば、4Kで十分で、それ以上は必要ないと思えなくもありません。

大御所の話を書いたあとでは気が引けますが、「東京モノレール」の動画を、自分の主観に基づいて、色調を変えてみました。

基の映像が、1988年に撮影されたもので、薄暮から夕闇に変わっていく時間帯に撮影されています。基の映像のままで十分に雰囲気を伝えているように思いますが、全体的に青味が感じられます。そこで、私の勝手な判断で、色付けを赤の方向に変更しています。

何度も書きますが、これで正解だとは思っていません。

これまでは、出来上がった動画を、自分のサイトのためのサーバに上げていました。この場合、1ファイルのリミットが100MBまでと決まっています。そのため、ファイルに書き出すとき、品質を最低にしなければなりません。

そこで今回は、YouTubeに上げました。ただ、基の映像がテレビで放送されたものであるため、著作権侵害となってしまいます。ですから、動画のURLを教えた人だけが見られる「限定公開」に設定してみました。これでも著作権侵害と判断されたら、自分のサーバ用に作り替えるつもりです。

実際にYouTubeへのアップロードを試みましたが、その途中で「著作権侵害の申し立てがあります」の注意が出ました。アップロードされた動画をAIでチェックしているのでしょう。そこで、YouTubeへアップロードすることは諦めました。これまで通り、品質を最低にし、自分のサーバへ上げておきます。

品質を最低にしてあれば大丈夫と書き出しをしました。ところが、結果は122MBで100MBをオーバーしました。そこで、今度は品質を自動から制限に換え、ビットレートを1000kb/sにしてみました。プリセットでは、10000kb/sになっています。10分の1にしたらどうか、と適当に見当をつけ、この数値にしてみました。

結果はまたも弾かれ、102MBです。次はこれを900MBにすると、結果は101MBです。そこで、最後は800kb/sにし、93.7MBでリミットに収めることができました。

もしよかったら、一応完成したつもりでいる(?)東京モノレールの修復動画を見てみてください。

春の楽しい電車「東京モノレール」1988

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