2007/10/03 新聞社と押し紙

本コーナーで以前、アメリカの新聞業界の最新事情を書きました。

それを書く中で改めて驚かされたのは、日本の主要全国紙の発行部数の多さです。今、世界で最も影響力を持つとされるニューヨーク・タイムズが発行部数【110万部】ほどだといいます。一方、日本ではどうかといいますと、トップの読売が【1000万部】。今や「アサヒる」ことが広く認識されてしまった朝日が【800万部】余りとされています。

これを下支えしているのが、日本独自といわれる、宅配制度であろうことは想像に難くありません。アメリカなど諸外国では、その日の新聞を読みたいと思う人は、売店で買い求めて1日単位で読者になります。その販売部数が積み重なっての、たとえばニューヨーク・タイムズであれば【110万部】になります。

一方、日本の新聞は、一旦購読契約を結んだ家には、雨が降ろうが槍が降ろうが、て槍の降ることはめったにどころかほとんど絶対ありませんが(^m^)、とにかく、ほとんど必ず毎日、その日の新聞を送り届けるシステムが完璧に出来上がっています。

ですから、たとえば「今日は風邪気味で、新聞など読む気にもならない。布団でもかぶって寝ていよう」というような独り暮らしの家にも【1部】必ず配達され、それらが積み重なった、たとえば読売であれば【1000万部】という数字になります。

日本の新聞は、この宅配制度という強固なシステムに護られ、これまで繁栄してきました。しかし、ネットの登場により、先行きを楽観できない状況が生まれました。その変化にいち早く対応しようとするのがアメリカの新聞社です。

その辺りの動きについては、前回本コーナーでそれを取り上げた時にも触れていますが、世界的に影響力を持つとされるニューヨーク・タイムズ紙でさえ、「5年先まで印刷しているかはわからない」という厳しい現実に直面しています。

この時代の流れは、もちろんアメリカに限った話ではありません。日本でもその現実から免れることはできません。今度ばかりは、終戦時に朝日がしたように、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)に泣きついてもダメです(^ω^)

そうした中にあって、昨日、注目すべき発表がありました。水面下で既に取りざたされていた、読売・朝日・日経3社による共同事業の正式発表です。具体的には、3社が共同でネット上にニュースを柱とするポータルサイトを立ち上げるということです)。

このポータルサイトということでいえば、日本では今のところ「Yahoo!」がポピュラーな存在ですが、それを圧するようなサイトを読売・朝日・日経で築き上げよう、ということでしょうか? そのサイトには、記事の要点だけを載せ、今ある各新聞社のサイトのより詳細な記事へ読者を誘導しよう、という考えのようです。

それにしても、この新聞メディアの一大転換点ともいえる発表記者会見の写真が昨日の新聞各紙に載っていますが、そこに出席した各新聞社の社長の表情が今ひとつ冴えなく見えるのはなぜでしょう。中でも、朝日新聞の秋山耿太郎社長(1945~)などは、社の不祥事でも発覚し、高いプライドだけで生きてきた氏が仕方なく開いた釈明会見でも見せられているかのようです。

想像するに、これまで長い歴史を持つ紙媒体の代表格であった新聞社が、時代の流れに抗することができず、嫌々ながらにネットへ進出して行かざるを得ない、といった感覚があるのかもしれません。

しかも、先行するアメリカの新聞社からも、成功したビジネスモデルが示されていません。将来、自分の新聞社がどうなるかもわからない状態で、真っ暗闇の中を、それでも手探りででも前へ進んで行かざるを得ない不安感が表情となって表れたのではないか、と想像します。

あれは、私が子供の頃に本か何かで読んだものでしたか。自分が大人になる頃には、新聞は配達されなくなり、読みたい時は各家庭で印刷して読めるような形態に変わる、というようなバラ色の未来予想がありました。現代はそれに近づき、記事はわざわざ印刷するまでもなく、PCのディスプレイや携帯の液晶画面で確認するのが一般的になりつつあります。

激変する日本の新聞業界事情については、先月発売された『週刊ダイヤモンド』の【9月22日号】が刺激的であると思います。特集に付けられたタイトルは「新聞没落」。

表紙には沈みゆく太陽が大きく載り、大手新聞社が没落していくことを暗示しています。私はこの特集記事が載った同誌は、喜び勇んで、発売当日か翌日に買いに走った記憶があります(^m^)

同雑誌に目を通すことで、日本独自の宅配制度が抱える問題点を知りました。そのひとつとして、新聞販売店が新聞社から無理矢理押しつけられる「押し紙」について書かれています。

ご存じですか? 押し紙。そのような話があることは、以前からそれとなく耳にしていたように思いますが、それを「押し紙」と呼ぶということは今回の記事で初めて知りました。記事には、いくつかの販売店の実例が書かれています。

そのひとつは、大阪で約55年間にもわたって販売店を続けてきたケースです。同店の経営者は、同地区の有力販売店が集まる会で名誉会員になるほどだったそうですが、今年6月末をもって店を閉じたそうです。その原因が押し紙だそうです。

その販売店の場合は、2つの店を経営していたそうですが、それぞれ、購読者数が【746部】と【500部】だったそうで、新聞社からは毎日同数の新聞が配達されてきた、ものと常識的には考えます。ところが、実体はまるで違います。

なんと、それぞれの店には【746部】の店には【2320部】、【500部】の店には【1780部】と3倍以上の部数が送られてきたそうです。送られる側の販売店の身になって考えてみてください。1件の契約家庭には【1部】の新聞を配達します。だのに、【3倍】以上の部数が配達されてくるのです。もちろん、これは新聞社からのサービスではありません。

新聞社からは毎月、配達された部数に応じた請求がされます。つまり、この販売店の場合、必要部数の3倍強の請求がされるということです。同販売店の場合、2店合わせて毎月【200万円】近くの赤字が生じたそうです。

当然、販売を請け負う店は、親会社である新聞社に事情を説明し、改善を求めます。しかし、新聞社あっての販売店。ここには完全な主従の関係が出来上がり、販売店は常に付き従う運命にあります。それにしても限度があります。

ある販売店のケースでは、弁護士に相談するなどしてようやく、毎日送られてくる押し紙の部数を減らすことができたそうです。

しかし、嫌がらせが始まりました。読者調査の名目で“調査員”が配達時間になると現れ、配達員のバイクを追いかけ回しては、配達される家の前で購読者の名前を大声で叫ぶなどの“妨害行動”に出たそうです。朝刊が配達される早朝にそんなことをされたら溜まったものではありません。

こうした新聞社と販売店のトラブルは、当の新聞社は当然全く取り上げないため、これまでは闇から闇に葬られる運命にありました。販売店常に泣き寝入りの構図です。

しかし、ネットが発達したことで、変化が見え始めました。問題意識を持った市民の手により、これまで新聞社が暗闇に隠してきた問題にも光が当てられ始めているのです。

こうした裏事情があるため、各新聞社の発行部数も素直に受け入れる気にはなりません。この公表部数は、日本ABC協会という組織が調査して公表しているようですが、この協会のいう発行部数というのは、「新聞社から販売店に送り、金額を請求した部数」としているそうです。

であれば、全くの水増しとみなすべきでしょう。なぜなら、誰にも読まれない迷惑物でしかない押し紙もしっかり金額が請求されているからです。本日ここで書いた販売店の場合は、実体の3倍の部数として計算されていることになります。

この、新聞社を巡る問題につきましては、『週刊ダイヤモンド』にある記事などを参考にし、今後も書くことになるかもしれませんが、本日はここまでにしておきましょうか。

ともあれ、新聞社はことあるごとに、この宅配制度や再販売価格維持契約(再販制度)の廃止論議には、弱者の側の視点で反対をしますが、現実問題、弱者である新聞販売店が新聞社の横暴で疲弊しきっている実体は見逃せません。

なお、毎日新聞社から無理矢理押しつけられる膨大な押し紙は、袋が開けられることなく、古紙回収業者に引き取られていくそうです。

ここで新聞の身になってみると、「みんなに読んでもらうんだ!」と張り切ってこの世に生まれ出た新聞が、袋からさえ出してもらえず、回収業者に売り渡されるというのは、何とも寂しい話ですね。

資源無駄遣いの問題に、各新聞社はどんな考えをお持ちか、お聞かせ願えませんか?

ついでで書くのは何ですが、先の大戦時、沖縄であったとされる“集団自決”について書いた教科書を、政府がより史実に正確に書き換えさせたことに反対する集会の報道ですが、朝日新聞は【11万人】が集まったと報じています。この数字に水増しがなかったかどうか検証する必要があります。

本日の産経新聞の一面コラム「産経抄」によりますと、この数字はあくまでも主催者側の発表でしかなく、関係者の話では、そもそも会場の収容人員は最大で【4万3000人】しかないのでは? という情報もあるようです。これが本当なら、ここでも実体の3倍近くの数字に捏造されていることになります。

ともあれ、本日分をここでまとめておきますと、新聞の発行部数でも【3倍】、そして沖縄の反対集会参加者数でも【3倍】の水増しとなり、朝日など大手新聞社が発表する数字は、「3分の1」ぐらいに聞いておいて丁度いい、ということにでもなるのでしょうかねぇ…(´-ω-`)?

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