時間をかけて結果を出せる人

今日の朝日新聞に、「時間をかけて答えを出す人」が紹介されています。

今月行われた競泳の東京五輪代表選考会の女子100メートル平泳ぎ決勝で2位となり、初めての五輪代表に決まったのがその人です。

その人は青木玲緒樹選手(1995~)で、今は東洋大学の4年生です。

本日の豆訂正
青木選手を現在大学4年生と書いてしまいましたが、誤りです。訂正します。現在は、ミズノに所属する社会人です。新聞の小見出しに「大学4年で開花 今年つかんだ初切符」とあったこともあり、勘違いしてしまいました。現在、26歳になられますので、大学4年というのは、特別の理由がない限り、難しいですね。失礼しました。

彼女を小学校3年のときから指導するのは、競泳日本代表のヘッドコーチをする平井伯昌氏(1963~)です。平井氏が青木選手の脚力の強さに惚れ込み、青木選手を水泳人生に引き込んだようです。

どんな世界でも、若い頃に才能を開花させる人がいる一方、高い能力を持ちながら、それをなかなか開花できない人がいます。青木選手の場合は後者といえましょう。

平井氏の青木評が朝日の記事には次のように載っています。

(青木)玲緒樹はポテンシャルがすごいのに、緊張しやすかったり、技術の習得に時間がかかったりする。

記事には、青木選手の泳ぎをスタンドから心配そうに観戦する平井氏の写真が添えられています。結果的には、初めて代表選手となりますが、手に汗握って観戦したそうです。

北島康介1982~)、萩野公介1994~)の両コウスケのオリンピックの金メダルのレースよりも、緊張した。

(朝日の記事にあった平井氏の感想)

青木氏が代表の座をなかなか手にできずにいた3年前、今回の記事を書いた記者は、青木選手に取材したそうです。そのときの逸話を興味深く読み、印象に残ったので、本投稿にまとめました。

記者が練習拠点のプールで取材し、コーチの平井氏からいわれた言葉で最も印象に残っているのは何かと尋ねたそうです。

青木選手から返ってきた答えは、「う~ん、ちょっと、考えてもいいですか」でした。

取材した記者も粘り強いと感じますが、そのあと、1時間じっくり話を聞きながら、印象に残る言葉を待ったということです。

1時間考えても言葉を思い出せず、青木選手には「また、思い出したら連絡しますね」といわれたということです。

興味深い選手に感じました。それらしい言葉を、実際にいわれなくても取材記者に答え、その場を済ます人が多いでしょう。それが青木選手の場合は、真剣に1時間考え、それでも思い出せなかったと答えているからです。

自分にも他人にもとても誠実な人、という印象です。

平井氏から掛けられた最も印象的な言葉を青木選手の口から聞けずに終わった記者が、荷物をまとめて最寄り駅目指して歩いていると、後ろから自転車に乗った青木選手が記者を追いかけて来たそうです。

1時間以上時間をかけて平井氏からもらった言葉を思い出し、記者に伝えに来たのです。

その言葉は、「自分に期待しろ」だそうです。

青木選手はこれまで、何度も水泳をやめようと考えたそうです。あるときは、平井氏が青木選手の両親に「長い目でみてください」と説得することもあったということです。

記者の質問に時間をかけて答えた青木選手が、今月5日の競技会で、やっと代表の座を手に入れたことになります。コーチの言葉を信じ、自分に期待した結果といえましょう。

競泳には特別関心がありませんが、もし見る機会があれば、青木選手の泳ぎに注目することにしましょう。