一眼カメラを使った動画撮影に興味を持ったことで、NDフィルターを都合3枚購入しました。一度に買ったのではなく、自分なりに考えて手に入れ、結果的に3枚の購入に至りました。
私の場合、一眼カメラを使って動画を撮るといっても、映像作品を撮るわけではなく、家で飼っている猫たち3匹を撮るのがせいぜいです。
であれば、フルオートで撮影すれば事足りるはずです。
ところが、無駄に凝り性な私は、自分が使うSONYの一眼カメラ、α7 IIでも撮影できるS-Log動画に興味を持ったことで、シャッター速度のことも考えるようになりました。
動画のシャッター速度については、ちょうど10年前に、本コーナーで取り上げたことがあります。
映画は1秒間に24コマ撮影しますが、その場合のシャッター速度は1/48秒ということになっています。動画や映画といいましても、撮影されるのは静止画で、それを1秒間に多数枚撮影し、それを連続して再生させることで動きが表現される仕組みです。
映画の場合は、それが伝統的に、毎秒24枚されることになっています。
1秒間に24枚撮影するのであれば、シャッター速度は1/24秒と考えがち(?)ですが、ムービーフィルムを使って撮影するのであれば、撮影済みのフィルムを送る必要が生じます。
その間はフィルムが露光してしまっては困りますのでシャッターを閉じます。
フィルムを使ったムービーカメラのシャッターは、フィルムの前で円盤状のモノが回転する構造になっており、そこに切れ目が作られています。
その切れ目の角度をシャッター開角度といい、その角度によってシャッター速度が決まります。
映画のムービーカメラのシャッター開角度は180度で、それによって、1/48秒というシャッター速度を得ていることになります。
デジタルのカメラを使った動画の撮影であれば、フィルムのカメラのように、フィルムを送る必要はありません。ですので、シャッター速度に縛られる必要がないように思えます。
しかし、そうであっても、毎秒撮影フレーム数の約2倍程度のシャッター速度が理想と考えられています。
24fpsであれば、1/48secというシャッター速度がありませんので、1/50secや1/60sec、30fpsの場合は1/60sec、60fpsは1/120secといった具合にです。
もっと速いシャッター速度を選べば良さそうに感じます。しかし、あまりにもそれが速いと、困った現象が生じます。
1枚1枚の静止画に写る被写体が静止して写ってしまうことです。
1枚の静止画として鑑賞する写真であれば、そのことが逆に求められます。スポーツ選手の決定的瞬間を撮影した写真が、シャッター速度が遅いことで、選手の動きがブレて写っていたら使いものになりません。
ところが、映画や動画の場合は逆で、1枚として見た静止画に被写体ブレがない場合は、前後のつながりが悪くなり、ギクシャクした動きに見えてしまいます。
そうした困った現象を起こさないために気をつけるのが動画撮影時のシャッター速度で、それはデジタルカメラを使った撮影でも、毎秒撮影フレーム数の約2倍程度に抑えたシャッター速度が選ばれる理由です。
その理屈を知ってしまえば、いつでも簡単に、一眼カメラで動画撮影ができる。と考えられるかもしれませんが、その条件を得るのが難しい場合があります。
強い陽射しの屋外で動画を撮影する場合などがそうです。
ことに、SONYのS-Log動画を撮影するときは、遅いシャッター速度が得られにくくなります。
私も今回、SONYのカメラを実際に試し、その難しさに直面しました。
デジタルカメラになったことで、ISO感度が飛躍的に高感度になりました。私が使うカメラでも、ISO25600まで感度を上げられます。フィルムカメラを使っていた頃のことを考えますと、信じられないほどの感度です。
ただ、日中、屋外で遅いシャッター速度を得たい場合は、高感度は必要でありません。考え方は逆で、いかに、低感度で撮影できるかです。
それが、SONYのS-Logの場合は、最低ISO感度が、なんとISO1600なのです。
私のカメラは、最低ISO感度が50です。ISO100を一般的と考えれば、ISO1600は、ISO100から4段、感度を上げた状態です。
シャッター速度を中心に考えれば、SONYのS-Logで撮影するときは、始まりの段階で4段分、シャッター速度を下げにくくなります。
その分をレンズの絞りで補おうとすれば、絞りを4段分絞らなければなりません。
もっとも、動画撮影のときは、静止画と違い、必要以上に絞りを開ける必要がなくなります。
個人が趣味で動画を撮影するのであれば、レンズの絞りを解放近くまで開け、ボケた映像にするのもありでしょう。ネットの動画共有サイトのYouTubeに上がっている個人が撮影した動画には、そのような動画がよく見られます。
ただ、商業映画やテレビの海外ドラマを見ればわかるように、レンズの絞りを開けたぼけぼけのカットにはあまりお目にかかりません。
印象的なシーンにはそうした表現も使うでしょうが、通常は、適度に絞りを絞って撮影されています。
レンズの絞りに対する考え方は人それぞれでしょうが、F値が4.0でもまだ甘く、F5.6は最低必要と考える人もいるでしょう。
だからといって、逆に、レンズの絞りは絞れば絞るほどいいというわけではなく、日中の屋外でF5.6やF8で撮影したい人は、その絞りを選びます。
ところが、陽射しの強い条件では、それを選ばせてくれないことが起こります。特に、SONYのS-Logはそれが強く起こることを覚悟しなければならなくなります。
私も、このことに関心を持ってまだ1カ月ほどですから、いろいろな条件で確認しているわけではありません。それでも、そうしたことは想像できます。
カメラの適正露出を求めるためには、ISO感度、レンズの絞り、シャッター速度を勘案しなければなりません。
仮に、SONYの一眼カメラを使い、24fpsのS-Log動画を撮ろうという場合は、最低ISO感度がISO1600、シャッター速度は1/50sec、あるいは1/60secの二つがあらかじめ固定されてしまいます。
残るのはレンズの絞りですが、F5.6やF8を使いたければ、工夫するよりほかありません。
そこでようやく登場するのがNDフィルターというわけです。
私の手元には、フィルムの一眼レフカメラ、ヤシカ製CONTAX RTSおよびRTS IIを使っていた頃に手に入れた、富士フイルム製のNDフィルターがあります。
多くのNDフィルターは材質がガラス(?)です。私の手元にあったのはそれとは違い、トリアセテートという薄い素材でできたものです。
ゼラチンフィルターというものがありますが、その種類に属するフィルターです。
NDフィルターはレンズの前に装着して使いますが、フィルターの効果は、入ってくる光の量を減らすことです。眩しい陽射しを避けるサングラスのようなものを考えればわかりやすいでしょう。
NDフィルターはさまざまな濃度のものが用意されています。私が富士フイルム製で持っていたのは、【ND-0.9】と【ND-4.0】の2枚です。
富士フイルムの製品の号数をケンコー(ケンコー・トキナー)の製品に当てはめると、【ND-0.9】はND8であることがわかります。【ND-4.0】は、ケンコーのND1000よりも上で、ケンコーには該当する製品がないようです。
ケンコーの製品につけられたNDのあとの数字は、減光の効果を表しているのがわかります。ND8は、1/8の光量に落とすという意味です。露出でいえば、3段分の減光効果です。
すでに書きましたように、SONYのS-Logは、ISO感度だけで、ISO100より4段分感度を高くしてあり、3段分の減光では、とても間に合いません。
そこで私は、ガラス材質のNDフィルターで、ND64のフィルターをまず手に入れました。
フィルムの一眼レフ、α7 IIの時から使っているヤシカ・コンタックス用カール・ツァイスのレンズ(コンタックスRTS用)、プラナー50ミリF1.4のレンズに付けることを考え、フィルター径55ミリの製品を選びました。メーカーはマルミです。
はじめは可変NDフィルターにしようと考えましたが、ネットで調べると、可変式は、その構造上、色むらが発生しやすい場合があることがわかり(全部が全部ではありません)、濃度ごとに単体で作られているフィルターにしました。
ND64というのは、上で書いているように、1/64の減光効果があります。露出の段から見れば、6段分の減光です。
これを購入したあと、ND8とND64の中間ぐらいのNDフィルターが欲しくなり、同じくマルミ製で55ミリ口径のND16を購入しています。
ND16は、1/16の減光効果で、露出は4段分の減光になります。
動画の撮影に一番適していそうなND64を、マニュアルフォーカスのプラナー50ミリF1.4に装着し、SONYのS-Logに設定すると、ほとんどマニュアルでフォーカスが合わせられないように感じます。
ファインダーに映るLogに変換された映像は、コントラストが弱く、フォーカスがどこに合っているのか見分けるのが難しいです。
そこで、私が使う24ミリから240ミリの10倍ズームのレンズで動画を撮影することを考えました。これであれば、フォーカスはオートで合わせてもらえます。
このレンズのフィルター径は72ミリですので、プラナー50ミリ用に購入したNDフィルターを使うわけにはいきません。
そこで、フィルター径72ミリ用のND64を新たに購入しました。
私がAmazonでその製品を確認したときは、4,000円ほどの価格設定でした。同じページで、中古品であれば、700円ほどで手に入ることがわかり、私は中古品を注文しました。
注文品が届きました。早速それをレンズにつけようとしましたが、レンズ枠にねじ込むことができません。フィルター径が小さいからです。
間違えて注文してしまったのかと思いました。
ねじ込もうとしたフィルターをよく見ると、フィルターの下に何かがねじ込まれています。それは、ステップアップリングなのでした。
ステップアップリングというのは、フィルター径が異なるレンズにも同じフィルターを使えるようにしてくれるフィルターのアダプタのようなものです。
使いたいレンズよりフィルター径の小さなフィルターを使うことはできませんが、レンズのフィルター径と合わなくても、レンズより大きな径のフィルターであれば、介在してくれるステップアップリングを間に挟むことで使うことができます。
レンズのフィルター径が異なるごとにフィルターを用意していたのでは、出費が多くなります。それを抑えるため、多少大きめのフィルターを購入し、あとは、ステップアップリングを何種類か用意し、使い回す知恵をカメラ愛好家は持ちます。
私が購入した72ミリ径のNDフィルターについていたステップアップリングは、【67ミリ⇒72ミリ】でした。
実をいいますと、私はキヤノンのデジタル一眼レフカメラのEOS 30Dを持っています。
SONY製のミラーレス一眼に移行するまで私はキヤノンのデジタル一眼レフカメラを使っており、中古で手に入れたEOS 5Dに、マウントアダプタを介してプラナー50ミリのレンズを付けて撮影していたりしました。
EOS 5Dを手放したあとの2014年、EOS 30Dを中古で手に入れています。1万円台か2万円そこそこで手に入れた記憶があります。
このカメラが発売されたのは、今から15年前の2006年3月です。ハイアマチュア向けカメラの位置づけでしたが、現時点の感覚で見ると、性能が劣る印象は否めません。
画素(ピクセル)数は【850万画素】です(総画素数 有効画素数は820万画素)。驚くのがISO感度で、常用ISO感度はISO1600止まりです(※拡張でISO3200となります)。SONYのS-Logの始まりの感度が、このカメラの最高感度です。
しかも、ISO感度をオートに設定することができず、そのたびに、自分で感度を設定しなければなりません。
記録メディアは、コンパクトフラッシュです。ちなみに、私がそのカメラで使っているコンパクトフラッシュの容量は2GBです。
動画撮影の機能は搭載されていません。撮影できるのは静止画だけです。
搭載されている撮像素子は35ミリフルサイズではなく、一回り小さいAPS-Cサイズです。同じAPS-Cでも、ニコンよりキヤノンは若干小さく作られています。
ニコンのAPS-Cが35ミリフルサイズの1/1.5であるのに対し、キヤノンのは1/1.6です。
レンズにはそれぞれ焦点距離が記されていますが、それは35ミリフルサイズに準じた数字で、それをAPS-Cのカメラに装着した場合、焦点距離そのものに何も変化はないものの、写る範囲は、ニコンが1/1.5、キヤノンは1/1.6になります。
逆のいい方をすれば、キヤノンのAPS-Cの場合は、1.6倍の焦点距離のレンズを使う感覚になります。
私はEOS 30Dを購入したあと、APS-C用の”EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM”という7.5倍のズームレンズを購入し、割と気に入って使いました。
35ミリフルサイズに換算すれば、広角28.8ミリから望遠の216ミリをカバーしてくれます。
同じような意味合いで、今はSONYのα7 IIでも、24ミリから240ミリの10倍ズームレンズを使っていますが、キヤノンの7.5倍ズームは、最短撮影距離がSONY製のレンズよりも短いなど、使いやすく感じます。
このレンズを、マウントアダプタを介してα 7 IIに装着して使ってみたところ、悪くない写りをするように感じました。そんなこともあり、このレンズで動画を撮影することも考え始めました。
このレンズのフィルター径は67ミリです。3枚目のNDフィルターとして中古で手に入れた72ミリ径のフィルターを融通させるとすれば、【67ミリ⇒72ミリ】のステップアップリングが必要だと考え始めました。
その絶妙なタイミングで、偶然、中古のフィルターに、外し忘れたのか(?)、【67ミリ⇒72ミリ】のステップアップリングがついており、新たに購入せずに済んだのでした。
こんな幸運もたまにはあります。72ミリ径のフィルターを中古で格安に手に入れた上、必要になったステップアップリングが同時に手に入ったわけですから。
もしも、フィルターを新品で購入していたらあり得ないことです。
旧式のEOS 30Dに7.5倍ズームのレンズを付けて撮影してみました。
ミラーレスの電子ビューファインダーに慣れた眼には、30Dの光学式ファインダーが小さく、暗く見えます。
しかし、いくらファインダーを覗いていても、ペンタプリズムのファインダーですから、電池の減りを気にする必要がありません。シャッター音も懐かしく響きます。
そんなこんなで、不便な点は多くありますが、デジタル一眼レフカメラで写真を撮るのも悪くないと感じたりしています。
撮像素子が小さく、画素数も少ないですから、今のカメラには劣るはずですが、それほどの差には感じません。
これを機会に、もう一度デジタル一眼レフカメラをバンバン使うことにはならないでしょうが、ミラーレス一眼での撮影の合間に30Dも使うことにしましょう。