AIにある限界

この更新も、音声入力によって行なっています。使うのは Google の日本語入力と、それを利用したアプリの Edivoice です。これも AI を使った技術のひとつつでしょう。

AI といえば、先週末(23日)の日経新聞・書評欄で、AI について書かれた本が紹介されていました。マーカス・デュ・ソートイ1965~)という人が書いた『レンブラントの身震い』という本です。

日経の書評欄でその本について書いたのは、ゲーム作家の山本貴光氏(1971~)です。

AI が進歩すれば音楽や絵画、小説などが AI によって生成される可能性を考察した内容のようです。私は読んでいませんので、詳しいことはわかりません。

その本のタイトルにあるレンブラント1606~ 1669)は、知っている人には説明するまでもありません。17世紀オランダを代表する画家です。といいますか、古今東西の画家の中で、最も油彩画技法に長けた最重要画家であるのがレンブラントです。

私は昔から一貫して、レンブランが最も敬愛できる画家です。この思いは、終生変わらないでしょう。

そのレンブラントの画風に似せた絵画を、AI が描けるかどうか、ということも本書には書かれているものと思われます。

今のコンピュータよりも遥かに高速な演算処理能力を持つといわれるものに量子コンピュータがあります。それが使われるようになれば、AI にも大きく影響しそうです。しかし、そうなっても、AI がレンブラントの作品と寸分違(たが)わぬ作品を描くようになるとは私には考えられません。

山本氏も書いていますが、「人はどうやって絵を描いているのか」は誰にも理解の及ばないことです。どんなに高速な演算処理をする量子コンピュータであっても、数字によって、創造の秘密を解き明かすことは不可能ではないか、と私は考えるからです。

AI に、いかにもレンブラント風の絵を描かせることはできるでしょう。しかしそれは、どこまで行っても「レンブラント風」で、本物に少し似ただけのレプリカです。

それを見た人が、心を揺さぶられるでしょうか。装飾品として部屋に飾るかどうかは、個人の自由ですが。

どういうことかといいますと、たとえばレンブラント作品に特徴的な、これでもかというほどの油絵具の厚塗り表現を、3 D プリンタなどを使うことで、それっぽい表現は実現できるかもしれません。

しかしそれは、なんとなく似ているだけで、レンブラント作品の代わりには到底なりません。

ロボットが絵筆で絵具を取り、カンヴァスに載せているわけではありません。カンヴァスに向かう画家は、自分でもわからないようなインスピレーションを感じながら、その時、その瞬間の心の有り様で、パレットに色を創り出し、カンヴァスに載せていきます。

いつ終わるともしれない行為の繰り返しにより、カンヴァスには絵具が重なり、生乾きの絵具の上に新たな絵具が載ることで化学反応が起き、それを見る画家に新たなインスピレーションが起こり、気分が高揚した画家は、興奮状態で色を創り、夢中になってそれをカンヴァスに載せたります。

晩年にゆくほどレンブラントの画風は奔放となり、近づいて見ると、何を描いたのかわからなかったりします。しかし、離れて作品を見れば、これ以上ないほどそのものを表しています。

その絵の仕上がり過程は、それを描くレンブラント自身にもわからず、それだから、飽くことなく、カンヴァスに向かうのです。そんな画家の心の有り様を、コンピュータが数値で表すことなどできないはずです。

他の分野のことはわかりませんが、絵画の分野は、AI にとって換わることはないと私は考えます。

機会があれば、今回紹介した本を自分で読み、何か気づいたことがあれば、本コーナーで取り上げることもしてみましょう。

気になる投稿はありますか?

  • 持ち味を殺さない顔は素敵持ち味を殺さない顔は素敵 私は新聞に載った一枚の写真を見て、思わずギョッとしました。ドギツイ化粧に見えたからです。しかし、バレエ鑑賞をよくされる方であれば、見慣れた化粧に見えるでしょう。そのようなメイクを「バレエメイク」といい、日本では長いことそのような化粧が作法のようになされてきたそうですから。 昨日の朝日新聞の文化面に「バレエメイク 作り込まぬ進化」と題された記事が載りました。記事の内容を […]
  • 新規の健康保険証が発行されない?新規の健康保険証が発行されない? 早いもので、本日から12月です。1日が日曜日の月は、13日後に13日の金曜日が必ず待っています。 https://youtu.be/aDrOvFtzyPQ Friday The 13th (1980) - Official […]
  • ポートレイト撮影の心得ポートレイト撮影の心得 本日の日経新聞「このヒト」のコーナーに次の記事があります。 日本通運で初の女性相撲部員 奥富夕夏氏社長に直談判、普及の夢追う 記事では、実業団の相撲部として名門の日本通運相撲部で初の女性部員となった奥富夕夏氏(1998~)を紹介しています。 女子相撲に関心を持つ人であれば、奥富氏を知らない人はいないのでしょう。 奥富氏は小学生のときに相撲を始め、 […]
  • 手ぶらは自由手ぶらは自由 バッグ類を一切持たず、手ぶらで外出することがあるかと訊くと、男性の中には「ある」と答える人がいるかもしれません。 しかし、女性で「ある」と答える人はごく稀か、ほとんどいないのではないでしょうか。 街中を歩く人を観察し、バッグも何も持たずに歩く女性を捜しても、そんな女性を見つけられる確率は低そうです。 昨日の日経新聞の「ヒットのクスリ」というコーナーに次の見 […]
  • 東京は午後4時28分東京は午後4時28分 本更新を午前4時7分に始めました。 配送用のトラックなどはこの時間帯にも走っているなど、今の時間に働いている人もいるでしょう。ただ、多くの人にとっては、「真夜中」という感覚でしょう。 私は毎日午前2時半頃に起床する習慣です。その代わり、寝る時間は早く、毎日午後6時頃には眠ります。子供の頃はこんなに早くは起きませんでしたが、それでもその頃から、早寝早起きの生活を続 […]