旧石器捏造事件に見る新コロ騒動の影

およそ四半世紀の間、インチキが暴かれなかった事件があったことをご存知でしょうか。今から10年前の2000年11月5日にインチキが暴かれたのは次の事件です。

長年に渡って信じられていたことが実は捏造だったと暴かれたわけで、当時は大騒ぎになりました。それなのに、私はそのときの記憶がありません。これにはわけがあります。

個人的な話になってしまいますが、私のたった一人の姉弟であった姉が、その直前に亡くなっているからです。亡くなったのはその年の10月23日でした。その10日前は13日で、曜日が金曜日だったことも憶えています。

その日の朝、私は姉と先祖の墓を掃除に行きました。そのとき、その日がいわゆる「13日の金曜日」だねと冗談半分に話したことも記憶にあります。

そんな風にいつもと変わらずにいた姉が、その日の夜にクモ膜下出血を起こして意識を失い、病院へ搬送されました。その後、一時的に意識が戻ることがありましたが、結局は病院に入った10日後に亡くなっています。

その悲劇があった半月足らずあとの捏造発覚であったことで、それだけの騒動であったろうに、意識にほとんど残らなかったことになります。

同じような理由で、同じ年の5月に九州・佐賀県で起きた西鉄バスジャック事件の報道も記憶にありません。

この事件は、同年5月3日の大型連休中に発生しています。テレビや新聞は事件を大きく報じたはずですが、私はまったく見ていないからです。

この事件が起きる2日前の5月1日夜、私の父が亡くなり、3日は葬儀が行われたかもしれないなど、事件のことはまったく頭になかったのでした。母は1992年に亡くなっており、2000年の5月に、両親共に失ったことになります。

本日の豆共通点
肉親が亡くなった年には共通点があります。いずれも五輪イヤーであることです。母が亡くなった1992年は「バルセロナ五輪」、父と姉が相次いで亡くなった2000年は「シドニー五輪」が開催されています。一人生き残った私も、実は2004年に命を落としかねない経験をしました。その年の8月末、自転車で急坂を走行中に転倒し、急性硬膜下血腫を起こしたことによってです。この年にも「アテネ五輪」が行われたのでした。結果的には偶然に違いありませんが、五輪イヤーに限ってこのようなことが続き、個人的には良い印象を持てません。2020年の今夏には「東京五輪」が予定されていました。それでなくても不安な気持ちでいたところ、年初から新コロ騒動が始まりました。自分の中で懸念は高まるばかりでした。が、すぐに似非騒動だと気づき、胸をなでおろした次第です。

私事の話が長くなってしまいましたが、こんな個人的な事情で、当時は世間を大騒ぎにさせた騒動であったにも拘らず、私はNHKBSプレミアムの番組を見るまで、石器捏造事件のことは意識にほとんどありませんでした。

それを気づかせてくれた番組は、NHKBSプレミアムで放送された「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」です。

私は生放送で見ない限り、見たい番組があれば録画して見る習慣です。それが録画されたのは今年の9月24日で、前週の夜に放送された番組の再放送をその日の朝の時間に見たことになりそうです。

その日に再放送された回は、「偽りの“神の手” 旧石器発掘ねつ造事件」を放送し、石器捏造事件を取り扱っています。

この録画は、昨日になって見ました。それまでは、他のことに時間を使い、録画したその番組を見ることまでは手が回らないのでした。

その捏造が発覚するまで、在野で考古学を研究する一人の人間が、マスメディアによって神のごとく讃えられていました。放送ではその男をFと称していました。

ネットで調べると、「藤村新一」がFの正体であることがわかります。事件後に藤野は離婚し、藤野が妻の名字であったため、もとの苗字に戻ったのかもしれません。その後、2003年に再婚していることがわかっていますが、今の苗字が何か、私は知りません。ということで、番組であったように、捏造事件を起こした人物はFにします。

考古学に興味を持つ者は、多くが子供の頃にそれに興味を持つ例が多いようです。のちにFとつながりを持つ考古学者の岡村道雄氏(1948~)も、学校の図書館で偶然手に取った書物で考古学に魅せられ、その道に進んだと番組の取材映像で答えていました。

Fも子供の頃に考古学に興味を持ったものの、高校を卒業して仕事に就いています。その後もその方面への興味は続き、遺跡の発掘があると、それに参加するようなことをしたのでしょう。

その後、発掘現場の深い地層から石器を発見するようになり、それが続いたことで、いつしか、Fの手は「神の手(ゴッドハンド)」とされていったようです。しかし、Fは、自分で発見する石器を自分で作り、誰もいない早朝などに地面に埋めていたことが明らかになります。

そうした捏造は1974年頃に始めた、と番組では伝えていました。それが発覚するのが2000年11月ですから、およそ四半世紀の間、Fの捏造は見逃されたばかりではなく、彼を在野の権威にまで上り詰めさせています。

Fの捏造が始まる以前、日本列島に人類がいた痕跡は約3万年前までとされていました。それが、捏造がエスカレートし、最後の頃には約70万年前には日本列島に原人がいたとされ、それは北京原人並みだとして、古代史ブームが巻き起こっています

ブームが起これば人間がすることは今も昔も変わらず、当時の映像を見ますと、関心を持つ者が多数集まり、遺跡の周りには人の波ができています。

私は古代史に関心がなかったのか、そうしたブームが巻き起こったのは記憶していません。

原人の石器が発見されたことにされた東北のある地方は、「世紀の大発見」を町おこしにし、地元の洋菓子店がそれにかこつけた商品を出すなどしています。

かつての遺跡跡はおそらく捏造発覚後にすぐさま埋め戻されたのでしょう。使い道のない広い空き地には雑草が生えています。そこに設置された幾枚もの大きなソーラーパネルが、兵どもが夢の跡の物悲しさを誘います。

Fの「神の手」による「世紀の大発見」が続いていた頃も、一部の専門家はFの発見に疑問を抱いていたようです。そんな一人は、Fが発見したものは、江戸時代の地層から携帯電話が出てきたオーパーツのようなもので、ありえないと話していたようです。

この騒動事態よく記憶していないので、当時の報道がどうだったかも記憶にありません。権威が牛耳る考古学にひたすら追随する報道に徹していたでしょう。

番組は、捏造を暴くきっかけとなった毎日新聞の記者たちの活躍を伝えています。

その取材は、Fの捏造を疑う人の投書で始まったそうです。取材にあたった記者は揃って考古学には素人で、予断がなかったことは良い方向に作用し、捏造発覚につながったということです。

捏造を見極める取材は原始的で、記者たちが民生用のビデオカメラを用意し、Fが捏造のための石器を埋める場面を待ち構えて撮影することです。一度目は、カメラの操作に不慣れで、捏造の場面を目撃しながら、撮影に失敗します。

記者たちは取材班の責任者にこっぴどく叱られたようですが、二度目は奇跡的なほど間近での撮影に成功し、その録画ビデオをFに見せることで、捏造が事実であることを告白させることに成功しています。

捏造が発覚後、Fは精神のバランスを崩し、「神の手」と称賛された自分の指を自分で切断した、と番組では伝えていました。

そのあたりをネットの事典ウィキペディアで確認すると、Fは自分で自分の右手の人差指と中指を、斧で切断した、と書かれています。

その道の権威とマスメディアが組んでしまうと、それを通じて知らされる国民の多くは、それを事実のことと受け取ってしまいます。また、権威が力を持つほど、それに異議を唱える人がいても、その異議は軽くあしらわれてしまいます。

この傾向は、今の新コロ騒動でも見られると確信します。

騒動の早い段階から、今の騒動に異議を唱える人がいます。私もそのように考える人と同じ考えを持ちます。しかし、そうした異議をマスメディアは「陰謀論」と決めつけて相手にしません。

石器捏造事件を教訓にする気があるのであれば、新コロ騒動でも、真偽を慎重に確かめる努力が求められます。新コロ騒動は、あとになって新コロ騒動は誤った騒動でした。では済みません。

この騒動によって仕事を失う人が多くいます。それがもとで、命を断つ人がいます。一度失われた命は、あとで償うことができません。

権威とマスメディアが石器捏造事件の扱い方の誤りを本当に反省しているのであれば、現在進行系で続く新コロ騒動のあるべき対応を今すぐ始めるべきです。

待ったなしです。

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