本コーナーで少し前、江崎玲於奈氏が、ご自分の技術が搭載されたソニー製のラジオを50年以上使い、今も使い続けている、というようなことをかきました。
その投稿の中でも書きましたが、私も物持ちは良いほうです。元来が新しもの好きですので、資金に余裕があるのであれば、次から次へと新製品に手を出したいところです。
しかし、自由になる資金が少ないため、それが機械類であれば、壊れるまで使い続けることになり、結果的に物持ちが良いといういい方で落ち着く、というのが偽らざるところです。
今回は、そんな物の一つについて書きます。それはカメラのレンズです。
私はフィルムに露光させるフィルムカメラの時代から趣味にしています。私が使っていたカメラは、ヤシカから発売されたCONTAX(俗にいわれる「ヤシコン」)というブランドの一眼レフカメラです。
私が所有した機種は、初代の”RTS”と、二代目の”RTS II”、それから、おまけのような感じで、”YASHICA FX-3 Super 2000″です。
初代の”RTS”は、35ミリフルサイズカメラであるキヤノンの“EOS 5D”を中古で手に入れる時、少しでも購入資金の足しになればと考え、下取りに出し、今は手元にありません。ほかの2台のボディは今も手元にあり、使おうと思えば使える状態です。
CONTAX RTSを手に入れたのがいつだったか記憶が確かではありませんが、1980年代のはじめではなかったかと思います。
私は元々映像には強い興味を持っており、スチル写真を始めるまでは、8ミリ映画にはまっていました。その後写真を始めましたが、8ミリのムービーフィルムの印象が頭に強く残り、写真のフィルムは、スライド映写機でスクリーンに上映できるリバーサルフィルムばかり使いました。
私が使ったのは、コダックのコダクローム64です。フィルム名についている64はISO感度です。デジタルカメラの時代になり、ISO感度が飛躍的に高くなりました。ですから、ISO感度が64しかないと聞けば、驚きでしかないと思います。
それでも、当時はそれが当たり前で、別に不自由を感じずに使っていました。
レンズ交換式カメラは、ボディだけあっても仕方がありません。交換レンズがあって初めて撮影できます。
私がCONTAXを使いたいと思ったのは、ドイツの有名レンズメーカー、カール・ツァイスのレンズがラインナップされたことでした。半分、ブランドイメージに騙されたところがなくもない(?)でしょうが、イメージ云々抜きに、私は惚れ込んで使いました。
当時はズームレンズは一般的でなく、焦点距離が固定された単焦点レンズが通常のレンズでした。
私が揃えたのは、次の4本です。数字に続く「ミリ」は焦点距離で、数字が小さいほど広角レンズ、大きいほど望遠レンズを意味します。またそれに続く”F”はF値のことで、数字(開放値)が小さいほど、いわゆる”明るいレンズ”(より速いシャッター速度で撮影できる)です。
4本のレンズの内、ディスタゴン35ミリとテレテッサー200ミリは手放してしまいましたが、未だにプラナーの50ミリと85ミリは手元にあり、私の相棒です。
キヤノンのデジタル一眼を使っていた時代から、CONTAXで揃えたマニュアルフォーカルの単焦点レンズを使えないものかと試行錯誤、異なるレンズマウントにレンズを対応させるアダプタがあることを知り、それをレンズとカメラボディの間に挟み、使うこともしました。
初めて使ったデジタル一眼カメラはキヤノンの”EOS Kiss X2″ですが、これは撮像素子のサイズが、APS-Cといって、フルサイズよりひと回り小さいサイズでした。
私が使ったキヤノンのAPS-Cは約1.6分の1で、たとえば焦点距離50ミリのレンズをつけると、ファインダーから見えて、実際に撮影できる範囲が焦点距離80ミリレンズ相当になる計算です。
そんなこともあって、そのあと、35ミリフルサイズといわれる、フィルム1コマとほぼ同じサイズの撮像素子が搭載されたEOS 5Dに乗り換えたわけですが、それでもマニュアルでフォーカスを合せるのが難しく感じました。
その後、ソニーが35ミリフルサイズのミラーレス一眼カメラを発売し、電子ファインダーでフォーカスが合わせられることを期待し、ソニーの一眼カメラに乗り換え、今に続いています。
私が今使っているのは“α7 II”ですが、ソニーの純正レンズは、広角から望遠までカバーする24ミリ~240ミリの10倍ズームレンズ(FE 24-240mm F3.5-6.3 OSS)1本だけです。
これはこれで重宝ですが、どうしても物足りなく感じることがあり、そんなときは、マウントアダプタを介してプラナーの50ミリと85ミリを持ち出して使います。
中でも好きなのがプラナー50ミリです。
焦点距離50ミリは標準レンズといわれます。ファインダーを覗いたときに見える被写体が、肉眼で見たのとほとんど同じで、肉眼と同じ距離感で被写体に向かうことができます。
より広角のレンズが好きな人には映る範囲が狭く感じるようですが、私はフィルムカメラの時代からこの50ミリを主に使ってきたため、50ミリが最も使いやすく感じます。
この50ミリさえあれば、撮り方によって広角にも中望遠のようにも使えます。何より、シャッターを切るのが楽しいです。
このレンズを使い始めてもう少しで40年になるかもしれません。故障したことは一度もなく、今後もおそらくないでしょう。
新しいレンズを買いそろえたい欲求は常にあります。が、資金がありませんので、40年選手のプラナー50ミリを相棒にして、今後も写真撮影を楽しむことになりそうです。