バーグマンのサスペンス映画

『ガス燈』という映画を見たことがありますか? 古い映画ですから、知らない人もいるかもしれません。

私はそんな作品があることは知っていましたが、少し前に初めて見ました。先週の木曜日(20日)にNHKBSプレミアムで放送され、録画して見ました。

主演女優がイングリッド・バーグマンであったため、題名からも、メロドラマのように勘違いし、見逃していました。実際には、サスペンス映画です。

元々は舞台劇で、二度ほど映画化されたようですが、バーグマンが主演した1944年版が有名のようです。

映画の冒頭、バーグマンが演じるポーラという名の若い娘が家の中から出てきます。家が建つのはロンドンで、広場に面しています。

夜霧が立ち込め、娘が出てくるのを、外にいる人々が興味深そうに眺めています。人々の中にいるひとりが手にする新聞の記事は、その家で殺人事件が起こり、犯人がまだ捕まっていないことを報じています。

バーグマンは10年前の娘を演じていますが、それを演技した当時、彼女は29歳に達していたことになります。しかし、モノクロームフィルムに写る彼女は、撮り方がうまいこともあるでしょうが、娘のように見えます。

その家を離れるまで、ポーラは母の妹と暮らしていました。実母は、ポーラを生んだ1年後か2年後(だったかな?)に気が狂い、亡くなったとされています。

そのあと、叔母に育てられますが、この叔母は有名なオペラ歌手で、家の壁には、叔母が舞台で歌う彼女の肖像画が掛かっていたりします。

この叔母が何者かに殺害され、一人残されたポーラを心配し、気分を入れ替えさせようと、イタリアへ歌手になるための留学を計画され、家を離れるのです。

留学先のイタリアでポーラは成長しますが、恋をし、歌の勉強に身が入らなくなり、レッスンをする先生が、レッスンを止めようといいます。

ポーラが恋に落ちた相手は、レッスンのときに伴奏のピアノを弾くグレゴリー(シャルル・ボワイエ)という男でした。

ポーラはグレゴリーと結婚し、ロンドンの家に戻り、生活を始めます。事件から10年後という設定です。

家には、家政婦が二人いますが、若い家政婦は、一癖ありそうに見えます。この家政婦を演じたのが誰か気になり、見終わったあとに確認しました。

すると、意外な女優が演じていたことを知りました。アンジェラ・ランズベリーです。

この名を聴いただけで思い当る人もいるかもしれません。日本でも放送された米国のテレビドラマ『ジェシカおばさんの事件簿』で主人公のジェシカを演じた女優です。

その彼女が初めて出演した映画が本作で、当時は17歳であったそうです。そういわれてみれば、のちの彼女の面影があります。

バーグマンといえば誰もが認めるような美貌を持つ女優です。しかし、本作のバーグマンが、私にはそれほど美しくは見えませんでした。

心理的に追い詰められ、気が狂うような演技が多いからかもしれません。

本作でヒロインが見せる心理状態が、そののち、原題の”Gaslight”から採った「ガスライティング」といわれるようになり、心理的虐待の一種とされるようになったそうです。

バーグマン演じるポーラは次第に精神のバランスを失っていきますが、それが誰に、どうして起こされているかなどは、本作をご覧になって確認してみてください。

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