今月8日、歌手の島倉千代子が亡くなりました。享年は75だそうです。今は長生きする人が増えたため、少し早死にのように思えます。
島倉死去のニュースを聞き、私はある事件を思い出しました。私とてリアルタイムでこの事件を知っているわけではありませんで、10年かそれ以上前、テレビのある番組がこの事件を取り上げ、それをビデオ録画しました。それを見ることで、当時24歳の島倉が犯人の“標的”にされたことを知りました。
その事件は、個人的にもずっと関心を持ち続けている「草加次郎事件」です。それらがすべて同一人物による単独犯行であるとしたら、1962年と1963に十数件の事件を起こしています。
ちなみに「草加」の読み方ですが、ネットの事典「ウィキペディア」の記述でも、「くさか」と「そうか」のふた通りのふりがなをふっています。個人的には、頭の中でこの事件を考えるときも、「そうかじろう」とふりがなをふって考えます。
そういえば、この事件を取り上げた番組に出演していた漫画家の黒鉄ヒロシが、冗談めかして「犯人はネーミングを、太郎じゃなくて次郎にしておいてよかったよね」といったのを思い出します。「だって、太郎だったら草加太郎(くさかたろう)でしょ? “臭かったろう”なんてギャグにされかねないもの」と。
黒鉄の話を受けた脚本家のジェームス三木がいいます。「次郎でよかったというけれど、そうとは限らないよ。草加次郎でしょ? “草囓(くさかじ)ろう”なんてことになりかねないしね」と。
事件の話に戻りますが、2年の間に十数件の事件を起こしていますが、犯人が最初のターゲットに選んだのが島倉でした。具体的には、島倉の後援会事務所に差出人が書かれていない封筒が届いたそうです。封筒は二重になっており、事務所の男性職員が封を切ると、中から細長い筒が出てきたそうです。
筒の裏には「草加次郎」「K」(「K」ということは、「くさか」と犯人は読んでもらいたいのでしょうか?)と書いてありました。筒の中に紙らしきものが入っているのがわかり、男性職員がそれを引っ張り出したところ、突然爆発し、炎と白煙があがったそうです。この犯行により、その職員は右手に2週間の火傷(やけど)を負ったそうです。これが、「ウィキペディア」に記された事件のあらましです(草加次郎事件:島倉千代子後援会事務所爆発事件)。
犯人は、翌年の5月から8月にかけ、今度は当時18歳だった女優の吉永小百合の自宅に、脅迫状を6通も送っています(草加次郎事件:吉永小百合脅迫事件)。
島倉は23歳。吉永は18歳。いずれも当時人気のあった芸能人で、こうしたことから、東京の某所に暮らしていた、人一倍強い自己顕示欲を持つ若い男の犯人像が浮かびます。
実をいいますと、この事件を取り上げた番組を録画し、それを何度か再生させるうち、私はある人物が若いときに起こした事件に思えてしまいました。
私が犯人ではないかと考える人物は、当時は無名です。しかし、今では知る人が少なくないぐらい成功しています。事件は解決せずに迷宮入りし、今後、真犯人が今も生きていて自分から名乗り出て、その人物が真犯人であったことが証明される事でもない限り、真犯人がわからないままとなってしまいます。
もっとも、私も捜査のことはわからない素人で、その素人がする“推理”ですので、私が考えている人物が真犯人であるのか、それともまったくの見当外れなのか、わかりません。私が真犯人とにらんでいる人物は今も生存しています。
あるとき、私はノンフィクションライターにこの話を持って行き、事実を確認してもらいたいと考えたこともあります。が、きっと相手にされないだろうと考え直し、未だに自分ひとりでその“推理”を温めています。私が考える真犯人の名を述べたら、知っている人であれば「えっ!? まさか( ゚Д゚) !」と驚くに違いありません。
事件は未解決のまま、今年で50年です。犯人が仮に当時20歳であれば、70歳になります。誰にも自分の犯行と知られずに50年生きてきた犯人は、自分の命が長くないとわかったとき、あの事件への自己顕示欲が強まり、「自分があの事件の真犯人だ」と名乗り出てきそうに思います。
そのときは、島倉千代子と吉永小百合にどんな感情を抱いていたのか、明らかにして欲しいと思います。