今、NHKで流されているスポットCMで気になるものがあります。
だいたいにおいて、NHKは国民からの受信料によって成り立っている組織なのであり、NHKにCMは必要なのかと思います。もちろん、NHKのソレは、民放の番組スポンサーCMとはまったく性格を異にします。番組の合間に流されるCMのほとんどすべては自局の番組PRです。
それにしたところで、今はそれがあまりにも多すぎではありませんか? たとえば今から10年前、今ほど自局の番組CMが流されていたでしょうか。データがないので比較できませんが、私個人の印象だけでいわせてもらえば、今ほどは多くなかったように思います。
で、もし、最近になって番組のPR・CMが多くなったとしたら、なぜでしょうか。
その原因の大部分は、本来は視聴率に縛られずに良質な番組を制作できる環境にあるNHKが、いつからか視聴率を意識した番組作りをするようになったため、と私は考えてみました。
番組のCMばかりではありません。ウィークデーの午後に放送している番組に「スタジオパークからこんにちは」(月曜~金曜/13:05~13:59)があります。
これもNHKの「広報番組」のひとつといえ、自局の番組に出演する芸能人や著名人をゲストに招いては、番組の広報活動に励んでいます。こうした番組やPR・CMを見ることで、視聴者がその番組の存在に気付く一面がないこともなく、まったく無意味と決めつけることはできません。
ただ、それがあまりにも“あからさま”である場合、視聴者のひとりとしては興醒め(きょうざめ:興味がそがれること=広辞苑)してしまうということです。
本日ここで取り上げたいNHKのCMは番組のCMではありません。2011年に全面的に切り替わる(ことになっている?)「地上デジタル放送」の啓発コマーシャルです。
私は日常的に、漫然とテレビを見る習慣はありません。ほとんどの場合、見たい番組を予めピックアップし、PCで録画したのちに見ることにしています。
例外は、朝夕の「気象情報」です。
本サイトには「空模様でボ・ソ・リ」という一応“お天気コーナー”(天気)らしきものを設けている関係上、毎日の天気が気になるからです。というよりも、私は元々天気予報が好きなのです。なぜでしょう。理由は自分でもわかりません。ともあれ、そういうこともあって、毎日の気象情報はほとんど欠かさず見ることにしています。
で、この場合の私なりの視聴方法ですが、ここでもPCの録画システムを使いますが、ちょっとだけ工夫をしています。ま、大した工夫ではありませんが、「タイム・シフト視聴」という機能を活用しています。
これは、録画している番組を「追っかけ視聴」できる機能です。夜7時前の気象情報を例に採りますと、18時50分にタイム・シフトをオンにします。そうしておいて、ウィークデーであれば、ちょうどその時刻にエアチェックが終了する「サンセットパーク」のデジタル編集に入ります。
編集といっても簡単なもので、番組が始まる前と終わったあとの30秒ぐらいずつをカットするだけです。あとは、それをMP3形式のファイルに圧縮すれば作業は完了です。なお、MP3に圧縮したといっても、塵も積もれば山となるで、HDD(ハードディスクドラブ)の容量を圧迫しますので、2、3カ月分の音声データが溜まったら、それをDVD-Rメディアに移し替えることにしています。
「サンセットパーク」のエアチェック・データをMP3に変換し終えたら、そこでタイム・シフト録画中の気象情報を追っかけ視聴し始めます。その番組は6時50分きっかりには始まりません。そこで、そのコーナーの始まりの部分までスキップします。これで、その間の数分間の時間を節約できます。
また、タイム・シフト録画を活用する利点がもうひとつあります。それは、気になる部分は何度でも繰り返して見ることができることです。特に気象情報のような番組の場合、最高気温などのデータの部分で一時停止させ、数字をメモすることもできます。
本日分の話からは脱線しましたが、ここまではPC録画における「タイム・シフト視聴」の利便性について書いてみました。
というわけで、私がライヴに近い形でテレビを見るのは、朝夕の気象情報の時間帯のみなのですが、そこでたまに流される「地上デジタル放送」のスポットCMに、今、ちょっとばかり引っかかっているのです。
内容はといえば、鴻上尚史氏が実に腑甲斐ない(ふがいない:いくじがない。気概・気力に欠けている=広辞苑)ダメ亭主を演じさせられています。
一所懸命に見ているわけではありませんので詳細まで記憶しているわけではありませが、その鴻上氏扮するダメ亭主が居間で新聞を広げています。亭主の向こうには地上デジタル放送が映ったテレビがあります。確か、一家のおばあさんがそのテレビを見ている設定でしたか?
そこへ、綺麗なお母さん(=ダメ亭主の妻)と小学生の女の子がやって来ます。そして、そのふたりがダメ亭主に天気と株価を尋ねます。ダメ亭主は、そのいずれにも答えることができず、情けない顔をして、黙々と新聞を読むふりをしてやり過ごす、というわけです。
地デジを見ていたおばあさんは、「それなら地デジで確認すれば?」と地デジを勧めます。かくして、お母さんと娘が求めていた情報は、ダメ亭主からは一切得られず、地デジでパッチリ識ることができたのでした。「めでたし、めでたし」。
独り蚊帳の外(かやのそと:当事者からはずれた立場。事に関与できない位置=広辞苑)に置かれた格好のダメ亭主は、最後の最後まで情けない顔をしているだけなのでした。
NHKはそこで、すかさず女性陣にキャッチコピーをハモらせます。「パパより頼りになるね。地上デジ!」。
私はNHKのこのスポットCMに「いじめの構図」を見ました。
これはNHKのこのCMに限ったものではなく、これまでにもよく見られた構図です。ある一家を描く場合、「ダメ女房」というのはめったに登場しません。そんなシチュエーションで描いたなら、たちまち女性視聴者からクレームが曲に殺到するであろうことができるからでしょう。
世の中をリアルに描こうとした場合、ダメ亭主でなくダメ男でもいいのですが、ダメなのは男ばかりではないはずです。何をもって「ダメ」というかは別にして、出来の悪い男というのもいないことはないでしょう。しかし、その同じ数、あるいはそれ以上「出来た男」というのもいないことには、世の中は円滑に回っていきません。女についても同様です。
なのに、これでもか、これでもかというように、テレビには「ダメ男」が登場してきます。
この構図、どう考えてもおかしくはないですか?
「そうではない」という考えがNHKにあるのなら、ものは試しです。地上デジタルの啓発CMの番外編を作り、そこで亭主と女房の立場を逆転させてみてください。
女房を徹底的にこき下ろし、家族全員に「ママより頼りになるね。地上デジ!」とハモらせることもお忘れなく。さて、それを見た女性の視聴者からは、どのような反響が日本放送協会に届くでしょう。
NHKの制作サイドに、もしも、「ダメ亭主を描いている分にはどこからも文句をつけられることはなかろう」という考えがあっての今回の啓発CMだとしたら、「弱いものイジメ」と大差ないのではありませんか?