2004/01/28 イケメン男学歴詐称で迷走

先日の本コーナーでも取り上げた古賀潤一郎衆議院議員(27日時点)の「学歴詐称疑惑問題」ですが、朝日新聞が25日付の「社説」で取り上げた際に付けた見出しにあったように、いよいよ”笑い話”の様相を呈してきました。

それにしても、25日付朝日の「社説」「学歴疑惑 ほんとは深刻な笑い話」は、朝日らしいといってしまえばそれまでですが、社会の常識の斜め上をいくかような内容になっていて、一読の価値があります。ということで、以下に抜粋させていただくことにします。

あーあ。ため息をつきたくなるような騒動だ。民主党の古賀潤一郎衆院議員(福岡2区)の学歴詐称問題である。昨秋の総選挙で、米国の大学を卒業したと公表していたが、大学側はそれを否定した。古賀氏は渡米して「卒業を確認する」という変わった行動に出たが、目的は果たせなかった。そればかりか、著名大学への留学は別の大学の略称と書き間違えたと主張していたが、本当の留学先とする大学にも在籍記録はないという。公選法は、当選する目的で虚偽の職業や経歴を公にした場合は、2年以下の禁固または30万円以下の罰金としている。有罪が確定すれば当選は無効だ。古賀氏は選挙中に「納得のいく仕事ができたら、10年で引退していい」と語っていたが、早くも議員辞職を迫られている。総選挙で山崎拓自民党副総裁(当時)を破ったのが古賀氏だった。選挙初日に菅直人代表が駆けつけ、長野県の田中康夫知事も「私の弟分」と応援した。テニス選手から自民党県議を経て自由党から国政をめざしていた古賀氏は「民由合併」を象徴する候補であり、清新さが売りものだった。それが、このあり様である。女性スキャンダルを抱えていた山崎氏に挑んだ選挙戦で、古賀氏の学歴にどれほどの集票効果があったのかはわからない。だが、問題の根は深い。学歴信仰がまだまだ社会にはびこっていることをうかがわせる「深刻な笑い話」に見えるのだ。人間としての中身よりも学歴に価値を見いだすかのような風潮を批判するのは簡単だ。採用の条件から「大卒」をはずす企業も増えている。それでも大学の名前が教育内容より話題になりやすく、大学ランキングもなくならないのが実情だ。有権者にとって候補者の経歴は、その人物像を知る手がかりにすぎないはずだ。しかし、票を投じる際の判断材料に、学歴を使っていないとも言い切れまい。外国の大学を持ち出した点も、いかにも日本的だ。海外ブランド品というだけでありがたがるのと根は同じなのかもしれない。だからこそ、政治家は経歴に留学経験を書き連ねるのだろうか。現職の衆院議員のうち約50人が海外で学んだ経験を持つ。自民党の安倍晋三幹事長もホームページに「南カリフォルニア大学に留学し政治学を学ぶ」と書いている。厳しい授業で鍛えられて修士号や博士号を取ったのなら、ひとつの実績だろう。それでも、大事なのは学んだ知識や経験を、政治の現場でどう使うかのはずだ。小泉首相のロンドン大学留学は、いま外交政策にどう生かされているのだろうか。「高卒」の肩書では選挙に不利と考えた候補者が過去にいた。92年に当選した参院議員だ。「大学入学」のうそがばれて、公選法違反に問われ失職した。あれから世の中は変わったのだろうか。

書き出しの「あーあ」というため息からして読者の度肝を抜く書き方になっています。しかも、読み進めていけばわかりますが、このため息の理由が、どうやら古賀議員の愚かな行為に対してではないことがわかり、読者(“朝日信者”の読者は除く)はまたそこで驚かされる趣向になっています。

それは結びの一行に凝縮されています。

あれから世の中は変わったのだろうか。

つまりは、朝日が「あーあ」とため息をついて見せたのは、「たかが学歴ごときにこだわり続ける日本という国の愚かな世の中」のあり様なのだ、ということです。平たく書けば、「日本の国民は相も変わらずおバカさんだなぁ。あーあ、やんなっちゃう」ということです、よね? 朝日さん。

挙句の果てには、小泉首相や安倍幹事長の名前まで持ち出して、あたかも古賀議員と大差ないかの書き方までしています。この朝日の「社説」自体が「笑うに笑えない笑い話」になってしまっているというのはどんなもんなんでしょう。

しかし、そうした書き方で世間の厳しい目をかわすことができないことを察知した朝日は、今日の「社説」では一転して古賀議員を非難するかのような書き方に転じています。以下が今日の「社説」「古賀議員 これは通らない」です。

民主党を離党する。議員歳費は受け取らない。国会の閉会中に渡米して大学の追加単位を取る。だから議員は続けたい。卒業したと称していた米国の大学を卒業していなかった福岡2区の古賀潤一郎衆院議員が、辞職はしないと宣言した。朝の街頭に立ち、顔をゆがめ、涙ながらに有権者に理解を訴える彼の姿は悲痛だった。しかし、何という勘違いだろうか。こんな主張が通るはずもない。古賀氏が問われているのは、議員報酬がどうのこうのではない。まして、単位をそろえてペパーダイン大学の卒業生になることでもない。自分が最も知っているはずの「卒業」を確かめると言って渡米するわかりにくさ。議席を手放すまいと、無理な理屈を並べ立てる姿勢。降ってきた火の粉を、こんな風に払うことしかできない人が、政治家にふさわしいか否かが問題なのだ。イラクへの自衛隊派遣をはじめ、年金改革、地方分権、道路公団改革など、日本の針路を決める課題をかかえた通常国会が始まった。政治の緊張は夏の参院選へ向けていよいよ高まろうとしている。国会議員一人ひとりの責任はいつにも増して重い。そんな時に、単位を取り直すから議員でいてもいいではないかと言われても、素直にうなずける人がどれほどいるだろうか。古賀氏の言葉は余りに軽い。こんなことで辞めてたまるか。古賀氏にはそんな思いがあるのだろう。学歴詐称が問題になった昨秋の総選挙では、自民党の当選議員2人が買収容疑で逮捕された。自分のしたことはそれほど悪質ではない。さかのぼれば受託収賄だ、脱税だ、詐欺だと、もっとひどい議員の犯罪や不正はいくらもある。獄中で歳費をもらい続けた人だっていたではないか、と。選挙区の事情もある。自分が辞めれば、自民党の山崎拓前幹事長が補選で復活を狙うだろう。女性スキャンダルに足を取られて落選した山崎氏が戻ってくるよりは、自分が辞めないことの方を地元は望んでいるのではないかと考えているふしもある。確かに、国会議員の不祥事は目を覆うばかりだ。古賀氏の議員辞職勧告決議案を出そうと意気込む自民党の中川秀直国会対策委員長も、かつて右翼団体幹部との交際疑惑や女性問題を報じられ、官房長官を辞任せざるを得なかった経験があったりする。そんな世界である。しかし、政治の惨めな現実を見せられているからこそ、もし古賀氏が経歴が事実と違うことを潔く認め、いち早く辞職の道を選んでいれば、評価は違っていたかもしれない。民主党も考えどころだ。離党届を預かったまま古賀氏の行動を静見するのでは、みずからの身ぎれいさを自民党への武器とする政党としては、おやおや、まったくである。

ただ、今回の「社説」でも、表面上は古賀議員を責めているように見えて、実は自民党の“問題議員”の実名を挙げて、同列、あるいはそれ以上に悪質であるかのような書き方をしています。こんな「社説」を読まされる読者の方こそ「おやおや、まったくである」といいたくなってしまうというものです。

転んでも只では起きない古賀議員同様に、「自分が転んだら、立っている相手を蹴飛ばしてでも転ばさずにはおかない!」という悪意が見え隠れする朝日の「社説」に仕上がっています。

今日の産経新聞1面には、この問題についての「識者の声」が載せられており、日頃は意見の分かれそうな面々も、今回の問題では意見が一致しているのは救われる思いです。各識者の声を記録しておく意味でも、以下に抜粋させていただくことにします(敬称略)。

漫画家・やくみつる 「イケメン」の性(さが)を感じる。チヤホヤされ、物事を大目に見られることが多かったから、人生をなめて渡れてきたのでは。打たれ強さがなく、説明責任を果たしていない。

政治評論家・三宅久之 はじめは「良くはないが、大した問題でもない」と思っていたが、大立ち回りで見苦しくなった。議員を辞めずに居座れても、議員活動は死に体。山崎拓さんの女性問題も許されないが、うそや公選法違反の古賀さんの方が、政治家として致命的。

日本大学教授(政治学)・岩井奉信 うそをついた時点で、有権者の負託にこたえられていない、とわかっていない。無所属では実質的に政治的役割を果たせず、地位に恋々(れんれん:こいしたっていつまでも思い切れないさま。未練がましいさま=広辞苑)としている。身元がきちんとしていることは就職では当然。議員の世界ではチェックが甘いということだ。

評論家・佐高信 卒業したか否かもわからない人には国政を預けられない。歳費を返すから続けさせてくれというが、国会議員を勘違いしている。山崎拓さんの女性スキャンダルに続いて起こった問題で、「上半身の疑惑」と「下半身の疑惑」だ。

漫画家・さかもと未明 辞職すれば復活もあったろうが、ミソをつけた。山崎拓さんは思いやりがなくて相手の女性を怒らせ、人としては古賀さんの方が悪意はないかもしれない。二人とも国会議員なら普通の人より偉いと勘違いしており品がない。

評論家・赤塚行雄 学生なら普通、日本でもアメリカでも「卒業するのに単位が足りるか」と大騒ぎしているはず。調べにいかないと卒業したかどうかわからないという、うさんくささがぬぐいきれない。

弁護士・田中喜代 重うその広報でも“当選すれば勝ち”を許すと選挙は成立しない。彼の対応はみんなうそという印象を与えており、潔く議員を辞めた方が傷は浅かった。

慶応大学教授(政治学)・小林良彰 卒業したつもりという「錯誤」を証明できず、そもそも、歳費を受け取らないことが可能か、政治家と単位習得が両立できるか、を考えて発言したのか? 早い段階で謝罪すればやり直しできたのでは。危機管理という意味で甘い。

評論家・塩田丸男 有権者に対して詐欺同然のことをした。カタカナの名前の大学の方が箔がつくと思っている根性自体が政治家として低級。「イケメン」とかで投票した有権者も問題だ。

評論家・工藤雪枝 有権者は学歴も判断の材料の一つとして投票しており、辞職すべきだ。政治家としても発言が二転三転して責任が感じられず、見苦しい。通っていた大学ぐらい記憶しているものだ。

いずれももっともな意見ではないでしょうか。確かに、テレビで報じられる古賀議員はいわゆる「イケメン」には見えます。しかし、こと男性に限っていえば、顔の造作は若いときには有利に働くかもしれませんが、それは所詮若いときだけの“武器”でしかなく、造作が綺麗すぎる男は、年齢を重ねることで却って薄っぺらに見えてくることが少なくないように思います。

古賀議員がその「イケメン」だけを売りにして当選できたとは思えませんが、同じ今日の産経の社会面に載っている選挙区の有権者の声を見てみると、総じて女性の方々が依然として古賀議員擁護とも取れるよな発言をしているのが気になります。以下は、記事にある福岡2区有権者の反応です。

  • (学歴詐称は)大騒ぎする問題ではない(21歳・女子大生)
  • 学歴なんてどうでもいい(31歳・主婦)
  • 辞める必要はない(71歳・女性自営業者)

古賀議員は、子供の頃からスポーツが万能だったそうで、中学時代に始めたテニスもめきめきと上達し、テニスが強いことで知られる私立高校へ特待生として入学したそうです。加えて学業も優秀で、さらにはあの「イケメン」ですから、中高時代はさぞかし女生徒にはモテたことでしょう。

その後、プロテニス・プレイヤーを目指して問題となっているアメリカのペパーダイン大学へ入学をすることになるわけですが、結局はプロテニス・プレイヤーへの夢は果たせず、政治家の道を目指すことになります。

そして、県議会議員を経た後、念願の国会議員に当選したばかりで今回の騒動の渦中の人物となってしまったわけで、その心中は察してあまりあるものがあることはよくわかります。それでも身から出た錆で、ここは潔く退く以外に手はないのではないでしょうか。

そしてもしも、議員を辞めた場合、節操のない日本のマスメディアのことですから、あの「イケメン」を見込んでテレビのキャスターかタレントに担ぎ出すお調子者が出てこないとも限りません。そうなった場合、それがご本人にとって本意かどうかはわかりませんが、与えられた宿命に身を委ねてみるのも一つの生き方です。

結局は「たかが学歴。されど学歴」といったところでしょうか。その「学歴信仰」に従って生きるも、反発して生きるも各人の自由ですが、少なくとも、自分が通った学校を本当に卒業しているかどうかぐらいは自分で確認しておくぐらいのことは最低限必要といえるでしょう。

ま、常識的に考えて、自分が卒業したかどうかぐらいは、通った学校へわざわざ出向いて担当者の手を煩わせたり、弁護士を捜し回らなくても(なぜこの話に弁護士が登場してくるのかがそもそも謎)、わかりそうなものですけれどね、、、(^_^;

人の顔も、若い頃までは「親の責任」とそれこそ「責任転嫁」できるかもしれませんが、齢(よわい:生まれてからこの世に生きている間。とし。年齢=広辞苑)40を過ぎたら、残りの人生は自己責任でいきましょう。造作のいい悪いは別にして。

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