2001/06/18 安倍晴明知ってるつもり?

昨夜は「知ってるつもり?!」(日本テレビ系列/日曜日21:00~21:54)という番組を見てみました。陰陽師安倍晴明が取り上げられていて、ちょっとばかり興味を引かれたからです。

最近、何かと話題になっていますよね、晴明(「安倍晴明神社」)。

恥ずかしながら、私は今年の初めに本コーナーで彼について書くまで名前すら聞いたことがありませんでした。

それまでにも、夢枕獏の小説やそれを下敷きにして描かれた岡野玲子(今年の手塚治虫漫画大賞、だったかな?を受賞されましたよね。ちなみに、彼女は手塚氏のご子息である手塚眞氏の夫人です)の漫画などにより、若い層を中心に、広く知られてはいたようです。

私は、付け焼き刃的な浅い知識から、晴明という人はもっとオカルトティックな“技”を縦横無尽に操った人物、といったイメージを勝手に持っていたわけですが、昨夜の番組を見る限り、それほどの派手さはないようです。

それよりもむしろ、常識的で、静かな印象を持ちました。

「現代でいえば、人の心の闇を解き明かす(解き放つ?)、精神科医のような存在ともいえるかもしれません」云々と番組の中でナレーションされていましたが、納得できる例えです。

私が今回の番組を見て一番印象に残ったのは、「人の心の持ちよう」についての話です。

今も昔も、人の心は厄介に出来ていて、ともすれば現在の自分が置かれた立場を怨み、ひいてはその怨みが第三者へと向けられたりします。晴明はそうした人の心に生じやすい弱さを、「心に棲みつく鬼」と表現して見せました。

それを、晴明が生きた平安時代の京都に当てはめれば、度重なる権力闘争に敗れ、無念の内にこの世を去った人の魂は怨念となって現世に留まり、かつての宿敵へと向かいます。また、勝者も勝者で、その目には見えない怨念に怯えながら日々を生きていくことになります。

現代はそれほどにドラマティックな怨念状況にはないでしょうが、それでも学校や職場内でのいじめなどから、「あんなヤツ、この世から消えてくれればいいのに、、、(-_-X)」というような“心の鬼”が生じないともいえません。

しかし、晴明が説くことには、そうした“心の鬼”は必ずや自分自身にはね返ってきて、結果、自分で自分を滅ぼすことになる、のだそうです。恐い話ではありませんか。

これはある種、人が生きていく上での“哲学”や“思想”、といってもいいものです。

ゲスト出演者の泉谷しげるは「結局のところ、彼の心の中にそうした怨みとかそういうものがいっぱいあって、全部わかちゃってるからそんな考え方に行き着いたんじゃないの?」というようなことをいっていました。

西洋の聖人でも、あるいは東洋の偉いお坊さんでもそうですが、彼らも初めから偉かったり、悟りの境地にいたわけではないのです。

自分自身の中にあるどうしようもなく嫌な部分に自分で気づき、それを何とかしたいということから“修行”をし、その挙げ句の果てにようやくそうした“心の鬼”から開放された自分を獲得していったのです。いや、いったのでしょう、多分。

ですから、まして、私のような凡人が「お、いい話を聞いた。よし、オレも今日から心に“鬼”など棲みつかせず、公明正大な人物になるぞ!」と意気込んでみたところで、おいそれと簡単に事は進まないだろう、というわけです。

でも、ま、そうはいっても、なるべくだったら“鬼”とは関わりたくないもので、せいぜい“修行”をして、少しでもそうした“境地”へ近づきたい、とは思います、ね?

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